大腸内視鏡検査前日の食事について: 内視鏡看護師が解説

皆さんこんにちは。今回は内視鏡検査の中でも、大腸内視鏡検査について前日の食事や検査でわかる病気、受けるタイミングなどをご紹介していきます。

大腸内視鏡検査は、肛門からレンズのついた内視鏡スコープを挿入し、大腸内全体の様子を観察する検査です。必要に応じて組織を採取して検査することで、病気がないか確認もしていきます。

健康診断で便潜血を指摘された方や、血便を自覚されて来院される方など、色々な理由で検査を受ける方がいます。今回は大腸内視鏡検査について、みなさんにご理解いただけるように詳しく説明していきますので、最後まで読んでいってください。

Ⅰ、大腸内視鏡検査でわかる病気

大腸内視鏡検査でわかる病気は色々あります。代表的な病気としては、腫瘍と炎症性腸疾患の2種類について紹介します。

Ⅰ-1、腫瘍性腸疾患

腫瘍性腸疾患とは、名前の通り大腸にできる腫瘍のことです。具体的な疾患には次のものがあります。

・大腸がん
・大腸ポリープ

大腸がんは50歳以上の方で、特に男性は女性の約2倍発生しやすいとされています。健康診断や人間ドックで便潜血を指摘され、大腸内視鏡検査で発覚するパターンが多いです。
大腸ポリープは大腸がんとは違い、良性の腫瘍ですが、まれにがん化することがあります。下血や便に血が混じることで発見する方も多いため、便に血が混じったら要注意です。

Ⅰ-2、炎症性腸疾患

炎症性腸疾患とは、大腸の粘膜に炎症が起こり、潰瘍やびらん(細胞がはがれ落ちて内側が見えている状態)を起こすものです。代表的な疾患は次のものです。

・潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は炎症により下痢や腹痛、発熱などを起こす難病です。若い方に起こりやすい病気で、20代といった若い方に見られることが多いです。高齢の方でもかかる病気です。

大腸の疾患について詳しく知りたい方は、当院のホームページでも疾患について紹介していますので、そちらをぜひご確認ください。

Ⅱ、大腸内視鏡検査を受けるタイミング

大腸には痛覚神経(痛みを感じる神経)がないため、自覚症状がないことがほとんどです。そのため、これから紹介するタイミングに思い当ったら、大腸内視鏡検査を受けるのがおすすめです。

Ⅱ-1、大腸に腫瘍や炎症などの病変が疑われる時

大腸に腫瘍や炎症が出ている場合、健康診断で便潜血が陽性になったり、便に血が混じったり、微熱が続いたりといった症状が現れます。

たまたま硬い便をして肛門が切れた場合を除いて、通常は便に血が混じることはありません。つまり、便に血が混じっているということは、大腸のどこかに腫瘍や炎症が隠れている可能性があります。

Ⅱ-2、原因不明の腹痛・下痢・便秘が続く時

明らかに血便や便潜血がなかったとしても、腹痛や下痢、便秘が何日も続く時は要注意です。例えば、腫瘍が大腸にできている場合、腫瘍のせいで便の通り道が狭くなっています。そのままだと便秘を引き起こすことや、溜まった便で腹痛を起こすことがあるからです。また、大腸が炎症を起こしていると、腸の働きが悪くなり、便が良い形にならないまま下痢として出てしまうこともあります。

このような症状が何日も続いて良くならない時は、一度病院で相談することをおすすめします。

Ⅱ-3、40歳以上の方は5年に1度は受けてほしい

年齢という点で言えば、40歳以上の方は5年に1度を目安に大腸内視鏡検査を受けていただくと安心できます。大腸のごく小さなポリープでもがん化するまでには、平均10年かかると言われています。

もちろん、それよりも早くがん化することもあるため、早期発見するには5年に1度大腸内視鏡検査を受けるのがおすすめです。

また、40代以上になると大腸がんの発生リスクが一気に高まりますから、40歳を機に大腸内視鏡検査を受けておくことが大切です。

Ⅲ、大腸内視鏡検査前の食事のポイント

多くのみなさんは、大腸内視鏡検査を受けたことがないかと思います。健康診断や血便で大腸内視鏡検査を受けようと考えている方のために、検査前のお食事について詳しく紹介します。

Ⅲ-1、3日前から飲酒や脂っこいものは控える

毎日便が出ている方でも、実は大腸の中には便がこびりついており、完全に綺麗な状態になっていないことがほとんどです。

大腸内視鏡検査を受けるには、大腸の隅々まで見渡せるように、細かな便もできる限り外に出してあげなければなりません。そのため、検査の3日前から消化に影響しやすい脂肪分やアルコールは控えていただきます。

また、毎日排便のない方の場合は、食物繊維の多い野菜やキノコ類がなかなか便として出てくれません。便秘気味の方は、3日前から消化の悪い物を控えていただいています。

Ⅲ-2、検査前日の食事は20時までに済ませましょう

次に、検査前日の食事についてです。検査前日の食事は、夜の20時までに終わらせるようにして、それ以降はお水やお茶などの水分だけを口にするようにしてください。夜の20時以降に食事を食べてしまうと、翌日の検査までに食べたものが消化されず、検査を上手くできないことがあるからです。

また、食べる物にも注意が必要で、前日の夕食はなるべく消化の良い物を食べましょう。特に脂肪分や食物繊維の多い物は避けて、うどんやお粥、具なしのスープなどを食べてください。

Ⅲ-3、当日の朝は水分のみOK

検査当日の朝はお水やお茶などの水分のみ飲んでもOKです。お薬も医師の指示に従って、飲んでもOKな物は検査の2時間以上前に内服してください。

ただし、牛乳やジュース、コーヒーなどの飲み物は、検査に影響を及ぼす可能性があります。飲むのは水かお茶だけにしてください。

Ⅳ、検査前に食べてもよい物

みなさん、検査前は消化の良い物を食べてほしいと言われても、「どんなものならいいの」と思われる方も多いことでしょう。もう少し具体的に検査前に食べてもよい物、食べない方がよい物を紹介します。

検査前におすすめの食事については、当院のホームページにて「胃腸にやさしいお食事」でも紹介しています。検査前の食事でお困りの方は、そちらのページもぜひご覧ください。

Ⅳ-1、消化の良い物ならOK

大腸検査前に食べてよい物を具体的に紹介します。下の表に紹介する食品は、検査前日まで食べてもよい物です。

前日まで食べてよい物

・白米やお粥

・麺類(うどん・そうめんなど)

・パン(ジャム・雑穀・レーズンなどの入っていないプレーンタイプ)

・卵

・豆腐(卵豆腐や高野豆腐も可)

・肉(ささみ・ヒレ肉・赤身肉など脂肪の少ない物)

・加工肉(ハム・ベーコン・ウインナーなど)

・魚(脂肪の少ない白身魚やすり身など)

・具なしの味噌汁

・甘味料(飴・プリン・プレーンヨーグルトなど)

・水分(お水・お茶・ブラックコーヒー・紅茶など)

・バナナやリンゴ(皮や種は取り除いたもの)

表の中に含まれるものなら、基本的に何でも食べて問題ありません。おすすめはスーパーやドラッグストアに売っているパックのご飯やお粥です。

ただし、食べてもよいからと言って、食べ過ぎると消化が悪くなることもありますから、腹八分目に抑えておいてください。

食べるものに悩む人には検査食がお勧めです。当クリニックでは、江崎グリコの「エニマクリンeコロン」を用意しています(1,200円)。

Ⅳ-2、食物繊維が多く消化されにくい物はNG

次に前日に食べてはいけない物も紹介します。下の表に入る物は前日に食べないようにしてください。

前日に食べてはいけない物

・玄米や雑穀米、胚芽米

・菓子パン(あんぱん・ジャムパン・揚げパンなど)

・胚芽パンやライ麦パン、ブランなど

・脂肪分の多い青魚、マグロ

・貝類やたこ、いか、魚卵など

・手羽先や焼き鳥の皮、バラ肉、ロース、ホルモンなど

・野菜全般(キャベツ・レタス・ネギ・ショウガなど)

・種のある果物(キウイ・イチゴ・スイカ・メロンなど)

・さつまいも

・キノコ類全般

・海藻類

・ゴマ類

・バターやチーズなどの乳製品

・こんにゃく

・乾物や干物、おからなど

・コーンフレークやケーキ、スナック菓子など

前日に食べてはいけないものは非常に多いため、注意が必要です。特に意識したいのは、食物繊維の多い野菜、脂肪分の多い物、キノコ類、海藻類、ゴマです。

日常的に食べている物の中に含まれることから、表に当てはまる物は意識して食事から外すようにしてください。

Ⅴ、お薬・サプリメントの注意点

大腸内視鏡検査を受けるにあたって、食事だけでなくお薬やサプリメントでも注意すべき点があります。検査前日からお薬はどうすればよいのか、一緒に確認していきましょう。

Ⅴ-1、前日は排便を促す薬を内服

検査前日の夜までは、普段と同じようにお薬を飲んでいただいても問題ありません。1つだけ注意したいのが、前日の夜に排便を促す薬として錠剤の下剤を内服していただきます。

便を柔らかくして、腸の中を綺麗にするために必要なお薬です。少量を飲む方もいれば、便秘になりやすい方は多めに内服してもらうこともあります。

Ⅴ-2、日常的に飲んでいるお薬でも休んでもらう場合があります

大腸内視鏡検査の当日は、医師の指示に従って普段の内服薬を飲んでいただきます。心臓や脳の病気をお持ちで、血液をサラサラにするお薬を普段から飲まれている方は、休薬すると血栓を起こす危険があるため、休薬しないで受診してください。

糖尿病で普段から血糖値をコントロールするお薬を内服されている方や、インスリン注射を行っている方は、当日のお薬は飲まないでください。朝食を食べないでお薬を使用してしまうと、低血糖で命に関わることもあります。

その他の高脂血症や胃薬などは、検査に影響を及ぼすことがあるので、内視鏡検査の当日は飲まないでください。

Ⅴ-3、サプリメント類は飲まずに来院しましょう

どうしても飲まなければならないお薬以外で言うと、サプリメントも検査当日は飲まないでください。サプリメントは病院でもらえるお薬とは違い、みなさんが個人的に内服する栄養剤の一種です。

どうしても飲まなければならないお薬ではないので、サプリメントも検査当日は飲まずに来院してください。

まとめ

今回は、大腸内視鏡検査前日の食事を中心にご紹介させていただきました。今回の記事のポイントは、

・血便や便潜血、お腹の不快な症状が続く時は大腸内視鏡検査を受けるべき
・大腸内視鏡検査の前日は消化の良い物を食べる
・キノコ・海藻・ゴマ・野菜など消化の悪い物は大腸内視鏡検査の前日は食べない
・当日は血液をサラサラにする薬以外飲まない

次回も皆様のお役に立てる内視鏡の情報を提供できればと思います。

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