腰痛の原因は大腸がんかも?原因や症状について専門医が解説

大腸検査

「近頃、腰痛が続いているけど何か異常があるのだろうか」

「大腸がんになると腰痛が出ることもあると聞いて不安」

 

大腸がんと聞くと、腹痛や下血などお腹の症状を想像される方が多いのではないでしょうか。しかし大腸がんでは、ほかにもさまざまな症状が見られます。

 

大腸がんの前兆を見逃さないために注意したいのが腰痛です。腰痛は日常的に見られることも多く、見過ごされてしまうことが多くあります。今回は大腸がんと腰痛の関係や、大腸がんの原因や症状などについて見ていきましょう。

 

1章、そもそも大腸がんとは?

肺がんや胃がんなどさまざまな種類のがんがありますが、大腸がんはなかでも罹患率がもっとも高いがんです。男性の11人に1人、女性の13人に1人が生涯のうちに大腸がんと診断されています。それほど大腸がんは、私たちにとって身近ながんなのです。

 

1-1、大腸にできるがんとは

大腸がんとは、大腸にできるがんのことです。大腸とひとくちに言うことが多いですが、実はさまざまな部位が存在します。大腸の入り口である回盲部から順に盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、上部直腸、下部直腸、肛門管と別れています。

 

盲腸からS状結腸までの部分を結腸、上部直腸から肛門管までを直腸と呼びます。結腸がんや直腸がんと部位別に分けて呼ぶこともありますが、大きな分類で見ればこれらも大腸がんと同じです。

 

大腸がんの7割は、S状結腸や直腸にできます。多くの大腸がんはポリープから発生するため、初期の段階でポリープを除去することが大腸がんの予防として大切です。

 

1-2、大腸がんになる原因

大腸がんのリスクを高める要因としては、次のものが挙げられます。

 

・喫煙

 

喫煙と大腸がんのリスクは、喫煙本数と喫煙期間に比例して高くなることが明らかです。国立がん研究センターが行った研究によると、喫煙者は非喫煙者とくらべて大腸がんを発生する確率が1.4倍高いことがわかっています。

 

・飲酒

 

飲酒も大腸がんのリスクを高める原因です。お酒を一日で平均して1合以上2合未満飲む方はまったく飲まない方に比べて1.4倍、2合以上飲む方は2.1倍も大腸がんの発生率が高くなります。

 

・肥満

 

同様に肥満にも注意しましょう。BMIの上昇と共に大腸がんのリスクも高くなります。加工肉や赤肉は大腸がんと関係があることで昔から有名です。国立がん研究センターでは、加工肉は「人に対して発がん性がある」、赤肉は「おそらく人に対して発がん性がある」と判定しています。

 

1-3、大腸がんでよく見られる症状

大腸がんは、初期の段階ではほとんど症状がありません。症状が進行すると、体に異変を感じるようになります。

 

排便習慣の変化

「ここしばらくよく便秘をする」「下痢と便秘を繰り返すようになった」など、排便習慣が変わることがあります。今までと何か違うと感じるようになったら、早めに医療機関を受診しましょう。

 

排便習慣の変化は、なにも大腸がんだけで起こるものではありません。身近なものだと、過敏性腸症候群という病気でも便秘や下痢を繰り返すことがあります。大腸がんでないにせよ何かしらの病気が隠れている可能性があるので、検査をしてもらうのがベストです。このほか、便が細くなったり残便感が残ったりなどの症状も見られます。

 

当院では、24時間WEBにて大腸内視鏡検査の予約が可能です。下記より予約を承っています。

 

 

 

血便

大腸がんになると、血便がよく見られます。血便が続くことで「何かおかしいかも」と気づく方が少なくありません。血便が見られるのは、がんが作った新しい血管が排便するときに傷ついて出血してしまうためです。がんによって作られた血管は通常の血管より脆いため、少しの刺激でも出血します。

 

「痔かな?」と血便を見過ごしてしまう方も多いですが、血便にはさまざまな病気が隠れている可能性があるので一度検査をしてもらいましょう。ちなみに、血便といっても真っ赤な血が混ざることは多くありません。多くは、酸化して黒くなった血が混ざります。

 

体重減少

大腸がんが進行してくると、体重減少が見られることがあります。がん細胞は私たちが食事から摂取した脂肪やタンパク質などを栄養源に大きく育っていくことが特徴です。摂取した栄養素ががん細胞に取られてしまうため、普段と同じくらいの量の食事をしていても体重が減っていきます。ただし、初期の患者さんで体重減少が見られることはあまりありません。体重が減ってきた場合は大腸がんが進行していると考えられます。

 

貧血

大腸がんの細胞が作った新しい血管は、すぐに出血してしまいます。出血が続くとヘモグロビンが不足して貧血になることもあるため、ふらつきやめまいの症状がある方は注意しましょう。

 

ヘモグロビンとは、タンパク質と鉄が結合してできた物質のことです。酸素と結びついて全身に行き渡らせる働きがあります。出血するとヘモグロビンも失われてしまうため、酸素不足になってふらつきやめまいなどが起こってしまうのです。

 

腹痛

大腸がんそのものが痛みを生じることはありません。しかし、大腸がんによって便の通り道が狭くなり腹痛を起こすことがあります。痛くなったり治ったりを繰り返すことが特徴です。人によっては腹痛ではなく肛門あたりの痛みとして感じることもあります。

 

2章、大腸がんが原因で腰痛になることもある

大腸がんが原因で腰痛を起こすことがあります。日本整形外科学会によると、治療が必要なほどの腰痛を経験したことがある方の割合は、20代から70代の男性57.1%、女性で51.1%でした。過半数の方は腰痛を経験しているのです。そのため、腰痛が出たからといって、必ずしも大腸がんの兆しがあるとは言い切れません。

 

しかし、大腸がんができる場所によっては、腰痛として痛みの症状が出ることがあります。大腸がんの症状が腰痛として表れることはそう多くはありませんが、長く続く腰痛には注意が必要です。

 

2-1、腰痛が起こる内臓病気はがんだけではない

腰痛は大腸がんだけでなく、ほかの内臓病気でも起こります。以下のようなご病気でも腰痛が起こることが報告されています。

・大腸憩室炎

・虫垂炎

・胃潰瘍

一つ一つ解説していきたいと思います。

 

2-2、腰痛が起こる可能性のあるおなかの病気

大腸憩室炎

大腸憩室炎とは、大腸にできた憩室に炎症が起きている状態です。憩室とは、大腸の壁にできた袋状のへこみのことを指します。憩室ができても基本は無症状です。しかし、まれに出血したり炎症を起こしたりすることがあります。大腸憩室炎になると腹痛を起こすことが多いのですが、人によっては腰痛を起こすケースもあります。

 

虫垂炎

虫垂炎とは、虫垂が炎症を起こした状態のことです。一般的には「盲腸」と言われることもあります。虫垂は盲腸から垂れ下がっている管のことです。虫垂が大腸の裏側に回り込んでいる場合、痛みがお腹ではなく腰に来ることがあります。

 

胃潰瘍

胃潰瘍は、胃の粘膜に炎症が起きている状態です。健康な方の場合、胃酸や消化酵素から胃を守るための物質が産生されています。しかし胃を守る力が弱まったり胃酸の量が増えたりすると胃がダメージを受けて炎症を起こしてしまうのです。潰瘍が背中側にできた場合は、腰痛の症状が出る場合があります。

 

3章、こんな腰痛には要注意

腰痛は多くの方が日常生活のなかで経験するものです。「いつものことだろう」と軽視してしまいがちですが、次のような症状がある方はただの腰痛ではない可能性があります。できるだけ早めに医療機関を受診して、原因を調べてもらいましょう。

 

3-1、常に腰痛がある

「体を動かしたときだけ痛い」「同じ姿勢をしていると痛みが強くなる」など、痛いときと痛くないときの強弱がある場合は大腸がんの可能性は低いと考えられます。しかし、動作や姿勢に関係なく腰痛が出る場合は、内臓に問題がある場合が否定できません。

 

3-2、腰痛のほかに体重減少がある

腰痛だけでなく体重減少が見られる場合は、内臓に何かしらの問題が起きている可能性があります。大腸がんで体重減少が見られることは多くありませんが、ゼロとも言い切れません。腰痛に加えて体重減少も見られる場合は、体に何か異常が起きているサインかもしれません。

 

4章、大腸がんの検査方法

大腸がんが疑われる場合は、次のような検査が行われます。

 

4-1、便潜血検査

便潜血検査とは、便の中に血液が混ざっていないかを検査するものです。2日にわけて便を検査用のスティックで2回採取します。便潜血検査が陽性になった場合は、大腸がんの疑いがあるということで、全大腸内視鏡検査や大腸CT検査などに進むことが一般的です。

 

ただし、陽性=大腸がんというわけではありません。大腸がんと診断されるのは、陽性が出た方の約14%です。

 

4-2、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入して大腸を観察する検査です。いわゆる大腸カメラのことです。精密検査が必要となった場合、大腸内視鏡検査がまず行われることが多いでしょう。腸の中を直接見られるだけでなく、その場で組織を採取することも可能です。

 

4-3、大腸CT検査(CTコロノグラフィー)

大腸をあらゆる角度から断面図として画像化できる検査です。下剤を服用して腸を空にした後、炭酸ガスを肛門から注入して撮影します。全大腸内視鏡検査のように内視鏡を挿入しないため体への負担は多くありません。どこに腫瘍があるのか、どこかに転移しているのかなどがわかります。

 

5章、大腸がんに関するQ&A

では、最後に大腸がんに関してよく聞かれる質問にお答えしたいと思います。

 

5-1、大腸がんの初期症状でおならは増えますか?

おならが大腸がんの初期症状として表れることはありません。そもそも大腸がんは初期症状がほとんどない病気です。

 

5-2、大腸がんの腹痛はどんな痛みですか?

痛みが出たり治まったりを繰り返すことが多いでしょう。持続的に痛むことはあまりありません。

 

5-3、大腸がんの場合どのくらい体重減少が見られますか?

1か月で34kgほど体重減少が見られることがあります。ダイエットをしているわけではないのに体重が減る場合は早めに受診しましょう。

 

まとめ

気になる症状があるときは早めに受診しよう

大腸がんはほとんど初期症状がありません。症状が進行すると、血便や体重減少、腹痛などが見られます。人によっては痛みが腰痛として出ることもあるため、普段と様子が違う腰痛が見られる場合は早めに受診しましょう。

 

動作に関係なく痛みが出たり治まったりする場合は要注意です。大腸がんは定期的に検査を行うことで死亡率を減少させることができます。発症率が上がる40歳以上の方は、年に1度は検査を受けるようにしましょう。

 

当院では、大腸内視鏡検査の予約を下記より承っています。また検査については外来にても相談が可能です。

 

 

 

最新がん統計:[国立がん研究センター がん統計]

大腸がんとは?|知っておきたいがん検診 日本医師会

大腸がん(結腸がん・直腸がん) 予防・検診:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]

Botteri E, et al. Smoking and Colorectal Cancer Risk, Overall and by Molecular Subtypes: A Meta-Analysis. Am J Gastroenterol 2020: 115; 1940-1949.

お酒・たばこと大腸がんの関連について | 現在までの成果 | 多目的コホート研究 | 国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト

肥満指数(BMI)と大腸がんリスク | 現在までの成果 | 科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究 | 国立がん研究センター がん対策研究所

赤肉・加工肉のがんリスクについて|国立がん研究センター

 

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