いぼ痔（内痔核）の治し方を大腸肛門病専門医が解説

「最近おしりが腫れているような気がする」

「ティッシュペーパーに血が付くことがある」

「痔じゃないのかなぁ・・・」

と思うようなことがないでしょうか。男性も女性も関係なく、多くの方が悩むのが内痔核、いわゆる『いぼ痔』です。内痔核は、出産をされた女性やデスクワークなどで長時間の座位になる方がかかりやすいご病気です。

今回は、皆さんが人生で一度くらいは悩む可能性のある内痔核の治療法について解説したいと思います。本記事を読むことで痔核について理解を深めていただけますと幸いです。

１章、いぼ痔（内痔核）とは

内痔核とは、『いぼ痔』とも言われています。患者さんは、おしりが『腫れて痛い』とか『飛び出している』と言って医療機関に来られる場合が多いご病気です。

1-1、いぼ痔（内痔核）とはどんな病気？

肛門管内（肛門から入ってすぐのところ）の粘膜下と粘膜上皮下にある血管や結合組織からなるやわらかい組織（肛門クッションといいます）が次第に大きくなり、出血や脱出などの症状を呈する状態になったものを内痔核と言います。

それ以外にも静脈還流の阻害（肛門の血流がよどむこと）とそれに伴う粘膜の浮腫（むくみ）や血栓の形成、内肛門括約筋の過緊張が関与しているという説もあります。

1-2、いぼ痔（内痔核）にかかる人の割合

いぼ痔（内痔核）は、肛門疾患で最もポピュラーな病気と言われています。どのくらいの人がいぼ痔（内痔核）で悩んでいるかというと、4.4～13.3%（有病率）くらいの方がいぼ痔（内痔核）に悩んでいると報告されています。

症状の無い方を含めると、20～55％とかなりの方が大なり小なりいぼ痔（内痔核）を持っていると言われており、２人に１人はいぼ痔（内痔核）をお持ちになっていると考えられています！

1-3、いぼ痔（内痔核）の原因は？

いぼ痔（内痔核）の原因は生活習慣に関するものが多いとされ、排便回数の減少や努責（息み）などの慢性的な便秘症状のある方が多いとされます。

また、重いものを扱う職業や長時間にわたって座ることの多いデスクワークの方、野菜や果物などの繊維の多い食事をあまり摂らない方も注意が必要です。その他には妊娠、出産、慢性的な下痢などを契機に内痔核になることもあります。

遺伝的な要因は今のところ明らかではありません。

いぼ痔（内痔核）の原因

上記の原因に当てはまる方で、痔が気になる場合は当クリニック専門外来でお気軽にご相談ください。診察の予約は下記より承っています。

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２章、いぼ痔（内痔核）の進行を診断

いぼ痔（内痔核）を治療するにあたり、その進行度を知ることが大切です。進行度は下記で解説するゴリガー分類を使用しています。

2-1、ゴリガー分類（Goligher分類）

ゴリガー分類とは、いぼ痔（内痔核）の進行度を簡易的に分類したもの。

ゴリガー分類は、いぼ痔（内痔核）の治療法選択の指標として世界的に使用されています。表のように程度が軽い状態は、グレード１もしくは２、ある程度進行した状態はグレード３以上となります。

　　表：内痔核のグレード（ゴリガー分類）

2-2、ゴリガー分類のグレードで治療法が決まる

程度が軽い状態（グレード１，２）では生活習慣（食生活や排便習慣）の改善や坐剤・軟膏等を用いた薬物治療が中心となります。この段階を維持していくことが大切です。グレード２でも、出血がある場合や大きい痔核の場合はジオン注射も選択肢の１つとなります。

ある程度進行した状態（グレード３以上）では、薬物治療の限界であり、ジオン注射や手術療法を検討します。妊婦さんや腎不全を併存されている方、外痔核、嵌頓痔核の場合は、ジオン注射は禁忌とされており、手術療法を選択します。

３章、いぼ痔（内痔核）の治療法

治療に関しては、大きく保存的治療と外科的治療があります。この章では治療法について解説していきたいと思います。

3-1、保存的治療

まずは1-3で挙げた原因の改善が望まれます。水分や食物繊維を多く取って頂き、できるだけ便秘や下痢をしないような生活を心がけましょう。長時間座りっぱなし、トイレで息みすぎる、アルコールの過剰摂取は禁物です。

腫れや痛み、出血といった症状の緩和には薬物治療を行います。薬物治療には内服薬（肛門の血液循環を改善する）と外用薬（肛門の腫れや痛み、出血を緩和する）があり、両方を組み合わせて治療することも多いです。

3-2、外科的治療

外科的治療には様々な方法があり、病院によってもやり方が少しずつ異なります。大きく分けて、内痔核を切る方法と切らない方法があります。

• 結紮切除術

最もオーソドックスで昔からやられている方法です。内痔核を栄養している動脈を結紮し、痔核そのものを取り除くやり方です。肛門には便が流れてくるため、排便の度に傷に便のカスが溜まって感染を引き起こす可能性があります。そのため、肛門の外の皮膚にもあえて創を作って、便のカスが溜まらないようにします（これをドレナージ創と言います）。

• PPH法

サーキュラー・ステープラという医療用のホッチキスを用いて、内痔核を粘膜ごと環状に切除する方法です。全周性の内痔核や粘膜脱が良い適応とされますが、単発性の内痔核では過剰切除になる可能性があり、まれに直腸穿孔（穴が開いてしまう）という合併症があります。

• 分離結紮法

内痔核と外痔核の根部（根元）を縛って、血流を途絶させることで痔核を脱落させる方法です。術後に痛みが強くなる事もあります。

• 輪ゴム結紮術

痔核を輪ゴムで緊縛して、血流を途絶させることで痔核を脱落させる方法です。手技が簡便で、痛みも少なく、外来でもできます。術後に出血を来すこともあるので注意が必要です。

• ALTA療法（ジオン注射）

切らない内痔核手術において、最も多くやられている硬化療法です。痔核成分を線維化（硬化）させる薬剤を注入することで、内痔核を縮退させます。グレード２、３の患者さんには良い適応と考えられますが、再発率（内痔核がまた大きくなる事）が高く、効果が一定期間であることもあるため、結局は結紮切除することもあります。外痔核がある場合は、使用できません（内外痔核がある場合は内痔核のみに注射をします）。発熱、直腸潰瘍、下腹部痛、血圧低下などの合併症があります。

• ５％フェノールアーモンドオイル（ＰＡＯ）

痔核の血管の周りに炎症を引き起こすことで、二次的な線維化により痔核内の血流を低下させる効果があります。出血のある内痔核の患者さんに用いることがあります。

以上が主な治療法ですが、この他にもその施設独自の方法やジオン注射と結紮切除を組み合わせた方法などやっていますので、気になる方は最寄りの肛門専門施設にお問い合わせください。

まとめ

今回は、いぼ痔（内痔核）の治し方について解説をしました。本記事のポイントとしては、

・いぼ痔（内痔核）は、多くの方がかかるご病気である

・いぼ痔（内痔核）の原因となる日常生活に気を付ける

・ゴリガー分類で治療方針を考える

・いぼ痔（内痔核）の治療には保存的治療と外科的治療がある

以上のポイントを理解することで、いぼ痔（内痔核）に対する理解を深めていただけたらと思います。

当クリニックでは、痔の診察・治療の専門外来を行っています。下記より診察を承っています。

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