女性における「大腸がん死亡数」は1位となっており、その予防や早期発見が重要な課題となっています。乳がん・子宮がんといった婦人科系のがんよりも大腸がんの方が問題となっているのが現状です。
女性の大腸がんは、男性と比べて手遅れで発見するケースが多いという印象があります。原因としては、男性と比べて職場検診を受ける機会が少ないということも影響しているかもしれません。とは言いましても、男性の大腸がん患者数も非常に多いため男性への対策も急務となっています。
大腸がんを予防するためには生活習慣の改善と2次予防である大腸検査が重要です。大腸がんのリスクを高める生活習慣としては、偏った食事・飲酒・喫煙、そして中でも一番大事なのが運動不足です。
今回は重要ながん疾患の一つである大腸がんの原因について生活習慣を中心に解説して、2次予防である大腸内視鏡検査についても触れたいと思います。大腸がんの原因について理解をすることでその予防や早期の発見につなげていただければと思います。
目次
1章、大腸がんの原因とは
大腸がんの原因としては、以下の2つが大きな要因と考えられています。
・環境因子
上記のように大腸がん発生の原因としては、遺伝的要因と環境因子の2つが主となります。遺伝的要因としては、遺伝子の異常により大腸がんのリスクが高くなると言われています。
環境因子としては、生活習慣にかかわることが影響します。本章では、どのような生活習慣が大腸がんのリスクを高めるのか解説したいと思います。
1-1、大腸がんの原因となる生活習慣とは
大腸がんのリスクを高める生活習慣としては下記のようなものが挙げられます。
・飲酒(アルコール)
・肥満
・糖尿病
・高身長
・喫煙
一つ一つ解説していきたいと思います。
加工肉(ハム、ソーセージなど)
ハムやソーセージなどの加工された肉類は、大腸がんのリスクになる可能性があると言われています。加工肉に使用されている発色剤の亜硝酸ナトリウムや硝酸ナトリウムなどは、発がん性物質と言われています。
食品衛生法にて使用料などが定められており、通常の摂取量であれば人体に対して影響はないと考えられています。ただし、過剰な摂取は大腸がんのリスクになる可能性があると言われています。
飲酒(アルコール)
日本人では、1日アルコール15g以上の摂取をすると大腸がんのリスクが上昇すると報告されています。アルコール15gは、ビール(350ml)程度の量となります。
男性の大腸がん患者における25%が、1日23g以上のアルコール摂取をしていたことが分かっています。アルコールを控えることで大腸がんの予防になるのではないかと考えられています。
肥満
肥満は大腸がんのリスクを上昇させると言われています。とくに男性は女性よりも肥満の影響を受けやすいと報告されています。男性では、BMIが25以上で大腸がんのリスクが高まると言われています。
糖尿病
糖尿病は、大腸がんのリスクを上昇させると様々な研究で報告されています。糖尿病患者は、食生活の乱れ・飲酒・肥満などの傾向も高いため様々な因子が大腸がんのリスクを高めているのではないかとも考えられています。
高身長
高身長の場合は、低身長よりも大腸がんのリスクが21% 高いと報告されています。一方では、高身長と大腸がんとは関係が無いとも他の論文で報告されています。今後の研究の結果が待たれるところではあります。
喫煙
喫煙により大腸がんのリスクが20~40%上昇すると報告されています。喫煙は、たばこの煙の中に多くの発がん性物質が含まれており、大腸がんだけではなく他のがんのリスクも上昇させます。
以上のような生活習慣が大腸がん発生に大きく関与していると考えられています。
1-2、大腸がんの原因となるほぼ確実な生活習慣とは
赤身肉
日常的に赤身肉(牛肉・豚肉など)を過剰に摂取すると大腸がんのリスクを上昇させることがほぼ確実と言われています。赤身肉に含まれるヘム鉄や,肉を高温調理により生成されるヘテロサイクリックアミンが大腸がんの原因になると報告されています。
2章、大腸がんのリスク低下となるものは
下図を参考にすると、大腸がんは乳がん・前立腺がんを除く他のがんよりも生涯に発生する率は高いがんとなっており、早急に対策が必要と考えられています。本章では、大腸がんのリスクを低下させるものをご紹介することで、その対策となればと思います。
部位 | 生涯がん罹患リスク(%) | 何人に1人 | ||
男性 | 女性 | 男性 | 女性 | |
全がん | 65.5% | 51.2% | 2人 | 2人 |
大腸がん | 10.3% | 8.1% | 10人 | 12人 |
肺がん | 10.0% | 5.0% | 10人 | 20人 |
乳がん(女性) | 11.2% | 9人 | ||
子宮がん(女性) | 3.4% | 29人 | ||
卵巣がん(女性) | 1.6% | 62人 | ||
前立腺がん(男性) | 11.0% | 9人 |
2-1、運動は大腸がんのリスクを低下させる
大腸がんのリスクを低下させるものとしては運動が挙げられ、とくに有酸素運動が効果的と報告されています。反対に運動不足は、大腸がんのリスクとなります。
2-2、その他のリスクを低下させるもの
運動以外で大腸がんのリスクを低下させるものとしては、下記のようなものが挙げられます。
・食物繊維を含む食品
・乳製品
・カルシウムサプリメント
また、下記に関しても大腸がんのリスクを低下させる可能性あると報告されています。
・魚
・ビタミンD
・マルチビタミン
以上のような食品は大腸がんのリスクを低下させると言われています。
大腸がんと食事の関係については、「大腸がんの原因と予防法を専門医が解説|日頃の工夫と定期的な検査が大切」の記事で詳しく解説していますので、ぜひご参考にしてください。
3章、大腸がんの予防のためには
大腸がんの予防のためには下記の2つが重要となります。
・2次予防
生活習慣に関しては、1章および2章で解説したようなことに気を付ける必要があります。2次予防に関しては検査がメインとなります。本章では、生活習慣の改善および2次予防に関して解説していきたいと思います。
3-1、生活習慣を改善させる
生活習慣の改善としては下記のことを意識する必要があります。
・禁酒
・禁煙
・有酸素運動を行う
以上のようなことを意識して生活を送ることで大腸がんのリスクを低下させる可能性があります。
3-2、2次予防(検査)・大腸内視鏡検査が重要
生活習慣の改善は重要ではありますが、即効性があるものではありません。また、既に大腸にポリープやがんができてしまっていては予防することはできません。ではどうすればいいかと言うと、適切な年齢で検査を受け始めて定期的に検査を受け続けることが重要です。大腸がんの早期発見・早期治療を受けることを2次予防と言います。
大腸がんの2次予防の検査としては下記の2つが挙げられます。
・大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
それぞれについて解説したいと思います。
便潜血検査
便潜血検査は、大腸からの出血の有無を調べることができます。大腸がんは、病変から出血することがあるため出血の有無を調べることで、大腸がんの拾い上げを行うことができます。便潜血検査は、職域検診や市町村などの各自治体で行われる大腸がん検診で受けることが可能です。40歳以上などの大腸がんのリスクが高くなるご年齢になったらぜひ一度受けることをお勧めします。
便潜血検査は2日法といって、2日間連続で検体を提出します。2日のうち一回でも陽性となった場合には、精密検査である大腸内視鏡検査を受ける必要があります。1回だけ陽性だったので大丈夫だろうと考えて、精密検査を受けない方が中にはいらっしゃいます。精密検査を受けない方は、受けた方に比べて大腸がんによる死亡のリスクが4倍高くなると報告されています。ぜひ精密検査である大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
大腸内視鏡検査は、直接大腸内を観察する検査で便潜血検査よりもより精密に検査をすることが可能です。便潜血検査では大腸からの出血の有無しか判断できませんが、大腸内視鏡検査では、直接大腸がんの有無を調べることができます。
大腸内視鏡検査は下記のような場合に検査が行われます。
・血便などの症状がある場合
・貧血などがある場合
・腫瘍マーカーが高い値の場合
・他疾患の手術前に精査を行う場合
・以前大腸ポリープや大腸がんの治療を行った場合
・人間ドックなどで検査を希望される場合
上記のような場合には大腸内視鏡検査を受ける機会があるかとは思います。では上記のようなことが無い方は検査を受けないでいいのでしょうか?大腸がんは生涯で10人に1人程度かかるご病気となっているため適切な年齢で受けることが望ましいと考えられます。ではどうしたらよいのでしょうか?
大腸がんは、40歳~50歳以上で発生率が上昇していきます。そのため50歳前後で大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。症状が無い場合には、消化管ドックで受けることが可能です。当クリニックでも消化管ドックを行っていますので是非ご相談ください。
大腸内視鏡検査は万能な検査なのか?
大腸内視鏡検査は、現状の医療の中では一番精度の高い大腸検査とされていますが、必ずしも万能な検査とは言えません。というのも10~20%程度の見逃しがあると報告されているからです。
大腸内は曲がりくねっており、襞(ひだ)といって大腸の粘膜に起伏があるため大腸内の全てを完璧に見ることは現在の医療技術では困難となっています。とくに小さな病変や凹凸がはっきりとはしない病変などは、見逃されやすいと言われています。
ではどうすればいいかというと、やはり定期的に検査を受けていただくということが大切となります。1回だけ受けて、何もなかったから大丈夫と考えるべきではありません。もし、検査時に大腸ポリープが見つかり切除された方は、病変の数や大きさにもよりますが1~3年くらいの間隔で検査を定期的に受けましょう。大腸がんの治療後の方は、1~2年毎に受けることが望まれます。何も指摘が無かった方は3~5年毎に受けることで、大腸がんの予防になるかと思われます。
*当クリニックでは、見逃しが少なくなるようにWEC(Water-exchange colonoscopy)での挿入や見逃しが一番少なくなると言われている7分前後の観察時間で検査をするように工夫をしています。WECについては、「大腸内視鏡検査は痛みがある?どんな痛み?痛みを防ぐ方法まで専門医が解説」で詳しく解説していますので、ぜひご参考にしてください。
まとめ
大腸がんの原因となる生活習慣を中心に解説をしました。本記事の内容のポイントとしては下記のようなこととなります。
・大腸がんの原因となる生活習慣としては西洋食中心、飲酒、喫煙、運動不足などがある
・運動(有酸素運動)は大腸がんのリスクを低下させる
・大腸がんの予防には2次予防である大腸内視鏡検査が重要
以上のことを理解して大腸がん予防に取り組んでいただくことが大切です。本記事内の生活習慣を行っており気になる方は、一度大腸内視鏡検査をご検討してください。とくに中年の方で肥満があり、飲酒・喫煙・お肉をよく食べる方は非常にリスクが高いです。このような方の場合には、大腸内視鏡検査を行うと必ずと言っていいほど大腸ポリープが見つかり、ある一定の確率で大腸がんが発見されます。
当クリニックでは、24時間WEBより大腸内視鏡検査の予約を承っています。下記よりお進みください。
電話での予約は下記より承っています。
※2021年10月18日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2023年3月5日に再度公開しました。
・国立がん研究センターがん対策情報センターホームページ.
・World Cancer Research Fund/ American Institute for Cancer Research. The Third Expert Report. Diet, Nutrition, Physical Activity and Cancer: A Global Perspective, American Institute for Cancer Research, Washington, DC, 2018.
・Mizoue T, et al. Tobacco smoking and colorectal cancer risk: an evaluationbased on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population. Jpn J Clin Oncol 2006; 36: 25-39.
・Winawer SJ, et al. Prevention of colorectal cancer by colonoscopic polypectomy. The National Polyp Study Workgroup. N Engl J Med 1993; 329: 1977-1981.
・Zauber AG, et al. Colonoscopic polypectomy and long-term prevention of colorectal-cancer deaths. N Engl J Med 2012; 366: 687-696.
・Ley RE, et al : Microbial ecology : human gut microbes associated with obesity. Nature 2006; 444: 1022-1023.
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東京千住・胃と大腸の消化器内視鏡クリニック 足立区院 >>
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