大腸がんは早期発見すると、生存率の高い病気です。一方で発見が遅れて進行した状態や他の臓器に転移してしまうと、生存率が極端に低下してしまうがん疾患の一つです。
そのため、次のように考える方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「大腸がんを早期発見して不安のない毎日を過ごしたい」
「大腸がんの初期症状を見逃さずに早期発見につなげたい」
大腸がんの初期症状はほとんど自覚できません。そのため早期発見したい場合は、定期的に便潜血検査や内視鏡検査を受けることが大切です。
この記事では、大腸がんを早期発見するために重要なことを説明します。さらに早期発見するための検査方法や初期の大腸がんに対する手術方法、ステージ(病期)における生存率を解説しますので、どうぞ最後までご覧ください。
目次
1章、大腸がんの早期発見につながる初期症状
大腸がんは初期段階で症状を感じることが、少ないといわれています。そのため、初期の大腸がんを発見するためには、定期的に便潜血検査や大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けることが大切です。
症状が現れたら多くの場合、進行した大腸がんが発見されることが多いです。しかし人によっては、初期の段階で出血や排便の変化がみられることもあります。今の状態を悪化させないためにも、異常を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。
大腸がんの症状については、「大腸がんの初期症状とは?漠然とした不安をなくすために専門医が解説」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
1-1、大腸がんを早期発見するための検査方法
大腸がんを早期発見するためには、次の検査を定期的に受けることが大切です。
- 便潜血検査
- 大腸CT検査(大腸コロノグラフィー)
- 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
各検査についてわかりやすく解説します。
1-2、便潜血検査
便潜血検査とは、検便で大腸からの出血を調べる検査法です。陽性だった場合は、大腸内視鏡検査を受けて、がんをはじめとした大腸の異常を調べます。
便潜血検査は、大腸がん以外の痔やポリープなどの出血の可能性がある病気の場合も陽性となります。そのため陽性だった場合、必ず大腸がんができているわけではありません。しかし便潜血検査がきっかけで、大腸がんが発覚することもあるため、陽性の場合は必ず大腸内視鏡検査を受けましょう。
便潜血検査については、「なぜ便潜血検査陽性で大腸カメラが必要なのか?原因も含め解説」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
1-3、大腸CT検査(CTコロノグラフィー)
大腸CT検査とは、大腸内に炭酸ガス(CO2)を注入して膨らませてCT撮影をする検査法です。大腸CT検査では、3次元画像を作成して大腸の状態を確認することができます。
服用する下剤の量が比較的少ないため、大腸内視鏡検査よりも少ない負担で、大腸がんを発見できる可能性があります。しかし大腸カメラのように大腸の疑いのある組織を採取して調べたり、ポリープを切除したりすることはできません。
大腸CT検査については、「大腸CT検査とはどのような検査なのか?大腸カメラとの違いは? | 専門医が解説」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
1-4、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
大腸内視鏡検査は、一般には「大腸カメラ」と呼ばれる検査法です。大腸内視鏡検査では、初期段階の小さながんやポリープを発見できます。そのため、大腸がんを初期段階で治療したい場合は定期的に受けておいた方が良い検査です。
大腸カメラを受けるのは大変なイメージがあるのかもしれませんが、現在は鎮静剤を用いた検査で痛みを感じることなく検査を受けられます。
次のページでは、大腸がんカメラについてマンガでわかりやすく解説していますので、どうぞご覧ください。
大腸がんが発見された場合は、その場で組織採取を行うことができます。大腸がんと診断された場合には、初期の段階であれば内視鏡での低侵襲な治療が可能です。進行した状態で発見された場合には、外科治療や化学療法などより侵襲性の高い治療が必要となります。
次項では、大腸がんが早期発見された場合の手術法について解説します。
2章、大腸がんが早期発見された場合の手術方法
大腸がんが進行して大きくなると、腹腔鏡手術や開腹手術などの外科的な対応が必要です。しかし初期段階の小さながんの場合は、内視鏡による手術で治療できます。早期発見された大腸がんに対する主な手術方法は、次のとおりです。
- 大腸ポリペクトミー
- EMR
- ESD
各手術についてわかりやすく解説します。
2-1、大腸ポリペクトミー
大腸ポリペクトミーとは、がん化する可能性のある大腸ポリープを切除する手術です。内視鏡の先端よりループ状のスネアと呼ばれる電気メスを出し、それをポリープにかぶせ電気を通して切除します。
切除したポリープは、病理検査に回してがん細胞であるかを確認してもらいます。大腸ポリペクトミーは保険適用での手術が可能です。
費用については、「内視鏡的大腸ポリープ切除術(大腸ポリペクトミー)の費用は?」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
2-2、EMR
EMRは病変部位を浮き上がらせて、ポリペクトミーを行う手術方法です。がん化した粘膜の下に生理食塩水やヒアルロン酸を注入して、がんを浮き上がらせます。
浮き上がった部分をポリペクトミーと同様に、スネアをかぶせた後に通電して切除します。ポリープが平べったい場合は、EMRで手術が行われることも多いです。
2-3、ESD
ESDは、大腸にできた大きながんやポリープを切除できる内視鏡手術です。ESDは、ポリペクトミーやEMRでは切除できなかった大きながんやポリープを切除できます。
また、開腹手術や腹腔鏡手術よりも手術が短時間で済み、入院期間も少ない点が特徴です。全身麻酔も必要がないため、比較的体への負担を減らして大きな腫瘍を取り除けます。
ESDについては、次の記事で詳しく解説していますので、どうぞご覧ください。
3章、早期発見の大腸がんに手術を施した場合の5年生存率は93.6%
国立がん研究センターの報告では、2cm以上の早期大腸がん患者がESDによる内視鏡治療を受けた場合、5年生存率が93.6%という研究報告を2022年に発表しています。(参考:2cm以上の早期大腸がんに対して内視鏡治療(ESD)が治療の第一選択となり得ることを前向きコホート研究で確認)
さらに、Ⅰ期の早期がんであれば5年生存率は、95.1%というデータもあります。生存率は大腸がんが治る確率を示す1つの目安で、がんの進行をしめすステージごとに数値が変化します。ここでは、生存率の意味と大腸がんの各ステージにおける5年生存率について解説します。
3-1、生存率とは
生存率とは、がんが確定診断されてから特定の期間を経て生存している確率です。3年生存率や5年生存率などがあり、パーセント(%)で表現されます。用いられることの多い生存率は、5年生存率です。次に大腸がんの各ステージにおける5年生存率について解説します。
3-2、大腸がんの各ステージ(病期)における5年生存率
国立がん研究センターが2019年に発表したがんの生存率に関するデータは次のとおりです。
出典:がん診療連携拠点病院等院内がん登録2013 年 3 年生存率、2010~11 年 5 年生存率公表|国立がん研究センター
大腸がんの5年生存率は、相対生存率でみるとI~Ⅲ期までが、それぞれ95.1%と88.5%、76.6%となっています。一方でⅣ期になると、生存率が極端に低下して16.7%です。
大腸がんに限った話ではありませんが、がんは早期発見がいかに大切であるのかがわかるかと思います。
実測生存率と相対生存率とは
実測生存率とは、がんが原因のものに限らずすべての死亡を含めて計算された生存率です。つまり、生存できなかった人のなかには、がん以外で亡くなった人の数も含まれています。
一方で相対生存率とは、がん以外による死亡の影響をなるべく排除して計算された生存率です。相対生存率でわかることは、がんと診断された人が、同じ性別や年齢の日本人が5年後に生存している割合と比べて、どれぐらい低いのかということになります。
大腸がんのステージ(病期)について
大腸がんにおける各ステージの進行状況は次のとおりです。
ステージ0:がんが大腸粘膜内に留まる
ステージ1:がんが固有筋層までに留まる
ステージ2:がんが漿膜下層を超えて浸潤している
ステージ3:がんの深さに関わらず、リンパ節への転移を認める
ステージ4:がんの深さやリンパ節転移に関わらず、他臓器への転移を認める
ステージ4になると5年生存率が極端に低下するため、多臓器に転移する前に、早期発見することが大切です。
4章、大腸がんを早期発見するためのポイント
大腸がんの約8割は大腸ポリープからできるといわれています。大腸ポリープのなかには、悪性のものと良性のものがあります。このうち、悪性のものががんに進行するのです。また良性の大腸ポリープでも、1cmを超えるとがんを含んでいる可能性が高まるといわれています。
以上から40歳以上になったら、定期的に便潜血検査や大腸内視鏡検査を受けて、悪性の大腸ポリープを早期に発見して、がんになる前に取り除くことが大切です。
まとめ
今回は大腸がんを早期発見するための方法について解説しました。大腸がんの早期発見するためには、以下のポイントを押さえていただくことが大切です。
- 初期の大腸がんには自覚症状が、あまりみらない
- 大腸がんを早期発見するためには、便潜血検査や内視鏡検査などを定期的に受ける
- 便潜血検査が陽性の場合は、内視鏡検査を必ず受ける
- 大腸がんは早期発見できれば、内視鏡治療で比較的簡単に取り除ける
- 大腸がんは早期に発見できれば10人中9人以上が5年以上生きられる
以上を理解して、大腸がんの早期発見に努めていただければと思います。
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