「50歳になったから少し身体のことも気を付けて胃がん検診を受けないと」
「そもそも胃がん検診ってどんなことをするの?」
50歳になると胃がん検診で、胃内視鏡検査(胃カメラ)を受けることができます。自治体によっては、胃カメラ以外に胃X線検査(バリウム検査)や胃がんハイリスク検診(ABC検診)などを選択することもできます。
それぞれの検査の特徴を知ることで、自分に合った検診を受けていただくことができると思います。通常は、症状やなんらかのご病気がないと保険診療で胃カメラや胃X線検査を受けることができませんが、胃がん検診であれば費用を抑えて、胃の検査を受けることができます。胃がん検診の内容や仕組みを理解していただき、適切な時期に適切な検査を受けていただくことをお勧めします。
今回は、胃がんの早期発見のための胃がん検診について詳細に解説しました。本記事を読むことで、胃がん検診についての理解を深めていただけたらと思います。
目次
1章、胃がん検診とは
自治体により検査内容は異なりますが、胃内視鏡検査(胃カメラ)、胃X線検査、胃がんリスク検査(ABC検診)が行われています。
胃がん検診の目的は胃がんによる死亡率を減少させることです。胃がん検診を理解するために詳細に解説していきたいと思います。
1-1、胃がん検診の種類
胃がん検診は、自治体などで住民集団を対象として行うがん検診でいわゆる対策型検診と言われるものに当たります。
胃がん検診は、以下のような検診内容を受けることができます。
・胃内視鏡検査(胃カメラ)
・胃がんハイリスク検診(ABC検診)
自治体によって検診の内容が異なることがあります。足立区では、胃カメラと胃がんハイリスク検診は行っていますが、胃X線検査は行っていません。
対象年齢は50歳以上となっています。自治体によっては多少異なりますが、2年に1回程度の間隔で受けることができます。
表でまとめると以下のようになります。
検診方法 | 対象年齢 | 検診間隔 | |
---|---|---|---|
胃がん検診 | ・問診 | 50歳以上 *胃X線検査に関しては40歳以上で可のこともあり | 2年に1回程度 *胃X線検査は毎年実施可のこともあり |
1-2、胃がん検診で胃がんの早期発見を
なぜなら、胃がんは、早期発見によって最悪のケースを避けることができるからです。
胃がん検診は、これまでの胃がんによる死亡者数減少に一役買ってきました。胃がん検診で胃がんの早期発見ができることにより、死亡者数減少に貢献していると考えられています。
実際に過去には、年間約5万人の胃がんによる死亡者がいました。現在では5万人は切っており約4万2千人(2020年)の死亡者を認めています。胃がんによる死亡者数は、年々減少傾向ではありますが、がん死亡数としては肺がん・大腸がんに続いて第3位となっており無視できないご病気です。
胃がん検診では、ピロリ菌の感染状況も確認することが可能であるため、ピロリ菌に対する除菌療法にもつながります。ピロリ菌を除菌することで、胃がんの予防にもつながる重要な検査なのです。
2章、胃がん検診の方法
胃がん検診の種類は、1章で解説したように主に3つあります。
・胃内視鏡検査(胃カメラ)
・胃がんハイリスク検診(ABC検診)
それぞれについて解説していきたいと思います。
2-1、胃X線検査(バリウム検査)
胃X線検査は、バリウムという造影剤を飲んでレントゲン検査を行い胃の内部を撮影する検査です。
では、胃X線検査はどのように行われるのでしょう。簡単に説明したいと思います。
胃X線検査の流れ
⇓
発砲剤(炭酸ガスを発生させる)およびバリウムを約100ml飲用
⇓
検査台(X線検査装置)に乗る
⇓
撮影を開始
⇓
放射線技師の指示に従い右に向いたり左に向いたり、身体を回転させたりする
⇓
14枚前後の枚数を撮影して終了(15分程度)
というような流れになっています。
胃X線検査で撮影された画像は、医師による読影が必要となります。医師会などで読影を行っているのが一般的です。
胃X線検査では、バリウムを使用して胃の粘膜の状態を写すことで下記のようなご病気を見つけ出すことが可能です。
・潰瘍
・ポリープなど
ただし、早期の胃がんなどの粘膜の変化に乏しいご病気に関しては、発見することが難しいと言われています。胃X線検査は、あくまで拾い上げの検査方法で、精密検査は胃カメラとなります。胃X線検査の結果が問題ないと診断されたとしても、100%異常がないということはできません。
胃X線検査で問題となるのはバリウムの使用です。
胃X線検査で問題となるバリウム
バリウムの飲用は様々な問題を引き起こす可能性があります。一番多いのが腸管内でバリウムが固まることにより便秘です。また、バリウムにより腸管に穴が開いてしまう消化管穿孔や腸管が詰まってしまう腸閉塞などの重大な合併症が起こることが報告されています。
*とくにご高齢の方では、若い方と比べ消化管の機能が低下しているためバリウム詰まりが問題となることがあり得るため注意が必要です。
下記のような方に関してはバリウムの飲用ができません
・腸閉塞の既往がある方
・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)の方
・食道・胃・十二指腸にご病気のある方
・脳血管障害がある方
・脳圧亢進でシャントがある方
・糖尿病の方
・1年以内に腹部・心臓・呼吸器・頭部・整形外科の手術をした方
・体重が130kg以上ある方
*X線を使用するため妊娠およびその可能性がある方も検査を行うことができません
*足立区では胃X線検査での胃がん検診を行っていません(足立区では、胃がん内視鏡検診および胃がんハイリスク検診[ABC検診]のみ行われています)。
2-2、胃内視鏡検査(胃カメラ)
胃カメラは、胃がん検診として非常に有効な検査方法ということから、2016年から開始されました。胃カメラは、胃X線検査より有効であるという様々なデータがあります。どのような有用性があるかというと、
・早期胃がん発見率が高い(胃カメラ 0.25~0.91%、胃X線検査 0.07~0.33%)
・胃カメラの方が早期の状態で発見される胃がんの率が高く、内視鏡での治療が可能
というようなメリットがあります。胃カメラは、胃がんの早期発見・早期治療に貢献する胃がん検診法であることが証明されています。
胃カメラと胃X線検査の比較を表にまとめましたので、参考にしてください。
胃カメラ | 胃X線検査 | |
---|---|---|
組織生検 | 〇 | × |
放射線被ばく | なし | あり |
バリウム飲用 | なし | 必要 |
費用 | やや高い | やや安い |
苦痛 | あり(静脈麻酔で楽に受けれる) | やや苦痛 |
早期がんの発見 | 〇 | △ |
ピロリ感染の有無の確認 | 〇 | △ |
検診での胃カメラは苦痛ではなくなってきている
従来、胃がん検診での胃カメラというと通常の太い内視鏡スコープで口から検査を行うことが主流でしたが、近年では経鼻内視鏡も導入されている施設が増えてきています。従来よりも楽に検査を受けることができるようになってきました。
施設によっては、胃がん検診でも静脈麻酔(鎮静剤)を導入している施設もあるため、痛み無く検査を受けることも可能です。
*当クリニックでも経鼻内視鏡および静脈麻酔を使用した胃がん検診を行っています。
電話での予約は下記より承っています。
*経鼻内視鏡と静脈麻酔については、「胃内視鏡検査(胃カメラ)における経口と経鼻の比較について」「胃カメラ・大腸カメラの静脈麻酔(鎮静剤)って怖くないの?」で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
胃カメラに関しては、「マンガでわかる!胃内視鏡検査」でも詳しく解説していますので、ぜひご参考にしてください。
2-3、胃がんリスク検査(ABC検診)
自治体によっては、ABC検診を導入しているところもあります。ABC検診とは、胃の健康度を評価するもので胃カメラや胃X線検査と異なり直接胃を見るものではありません。つまり画像で胃がんそのものを診断することはできません。
ABC検診は採血検査で行う
ABC検診では採血検査でピロリ菌の感染状況の有無とペプシノゲン値を測ります。この2つの項目を分類することで、胃がんのリスクが高い方とリスクが低い方を分けることができます。
ABC検診で測定するのは以下の2項目です。
②ペプシノゲン値(PG法):慢性胃炎に伴う胃粘膜萎縮の状態を確認する
それぞれについて解説します。
血清H. pylori抗体価
血清H. pylori抗体価は、ある一定以上の価であればピロリ菌の感染の可能性が高いと診断されます。血清H. pylori抗体価は、その値によって感染状況が判断されます。
・血清H. pylori抗体価が3以上10未満の場合 陰性高値 ピロリ菌に感染している可能性があると判定
・血清H. pylori抗体価が10以上 陽性 ピロリ菌の感染の可能性が高いと判定
PG法(ペプシノゲン法)
PG 法では、血清中のPG I(ペプシノゲンⅠ) とPGII(ペプシノゲンⅡ)の 値を測定します。
以下の場合にはPG法が陽性と判定されます
以上の血清H. pylori抗体価とPG法を合わせて下記の表のようにABCDと分類します。
ABC分類
血清H. pylori抗体価 | |||
---|---|---|---|
(-) | (+) | ||
PG法 | (-) | A群 | B群 |
(+) | C群 | D群 |
ABC分類では、下図のようにD群になるにつれて胃がんのリスクが高くなると考えられています。
各群では下記のようなご病気が多くなると言われています。
C群 胃過形成性ポリープ、胃腺腫、胃がん
D群 胃がん
*B群のうちPGⅡの値が30 ng/ml以上の場合は、胃がんのリスクが高いと言われているため注意が必要です。
A群は、胃がんのリスクが低いと考えられるため精密検査などから除外されますが、ピロリ菌除菌後やPPI内服中の方も含まれてしまうことがあるため注意が必要です。BCD群では、精密検査として胃カメラを行う必要があります。胃カメラで胃粘膜萎縮が認められた場合には、ピロリ菌の除菌療法が必要となります。
ABC 検診は5 年毎に受けることが推奨されており、自治体によっては胃がん検診として取り入れられてはいます。ただし気を付けなければならないのは、ABC検診自体は検査による胃がんの死亡率減少効果が証明されていません。
現在のガイドラインでは、胃がん検診としての推奨は得られていないのが現状です。ただし、採血だけで胃がんのリスクの高い低いを判定できるため、非常に簡便で多くの方に行うことができる検査です。
3章、胃がん検診の費用
胃がん検診の費用については、お住まいの自治体や、加入している健康保険組合などによる助成があります。その内容は検査を助成している団体によって変わります。また、検査方法によっても実際に負担する費用が変わりますので、これらも比較しながら、検査方法を選択すると良いでしょう。
足立区胃がん検診では、以下のようになっています。
内視鏡検査(胃カメラ)
検査項目:問診、経口内視鏡検査または経鼻内視鏡検査(胃カメラ)
胃がんハイリスク検診(ABC検診)
検査項目:問診、血液検査(ペプシノゲン検査、ピロリ菌抗体検査)
4章、胃がん検診の流れ
胃がん検診の流れは以下のようになります。
足立区の胃がん検診は胃X線検査を行っていませんので、胃がんハイリスク検診と胃がん内視鏡検診のみ対象となる年齢で受けることが可能です。
5章、胃がん検診が受けられる場所
胃がん検診は、各自治体で受けることが出来ます。各自治体が実施しており市区町村からの胃がん検診の案内が郵送で送られてきます。送られてきた書類やインターネットを通して受付をして、胃がん検診を行っている各医療機関で受けられます。
当クリニックでも胃がん検診を行っていますので、ぜひご活用ください。足立区の内視鏡胃がん検診をご希望の方は、下記より胃内視鏡検査(胃カメラ)で予約をお取りください。
電話での予約は下記より承っています。
6章、胃がん検診でよくあるQ&A
6-1、胃がん検診の結果はいつ来る?
胃がん内視鏡検診の結果は、その日に医師からの説明で分かります。組織生検などをした場合には2週間ほど結果が分かるのにかかります。
胃がんハイリスク検診(ABC検診)の結果は、2週間くらいかかります。
6-2、胃がん検診でピロリ菌が陽性といわれたら?
医療機関を受診してピロリ菌の除菌療法を受けることをお勧めします。
ピロリ菌に感染された胃では、感染していない胃と比べ胃がんのリスクが15倍以上になると報告されています。ピロリ菌を適切な年齢で除菌療法を行うことで胃がんの発症のリスクを抑えることができます。
6-3、ピロリ菌の除菌後は胃がん検診を受けるべきなのか?
ピロリ菌を除菌した場合には、内視鏡検査を定期的に受けることが推奨されています。ピロリ陽性と診断されて除菌療法を受けられた方では、除菌後の内視鏡検査受診率が低いということが問題となっています。
ピロリ菌が陽性で除菌療法を受けたとしても、胃がんのリスクが0(ゼロ)になることはありません。ある一定の胃がんのリスクが残ります。そのため除菌後も内視鏡検査を定期的に行う必要があると言われています。
ピロリ菌およびピロリ菌の除菌療法に関しては、「ピロリ菌を除菌するとどうなるの?除菌後の本当の話し」で詳しく解説していますのでぜひ参考にしてください。
まとめ
以上、胃がん検診にについて解説しました。本記事読んでいただき胃がん検診について理解を深めていただき、ご自身およびご家族を胃がんから身を守っていただけたら幸いです。
胃がん検診についてのまとめは以下のようになります。
・
・胃カメラは早期胃がんの発見に有用である
・胃がんハイリスク検診(ABC検診)は胃がんのリスクを分類できる
・ピロリ菌が陽性と診断されたら除菌療法を
以上が胃がん検診のポイントでした。胃がん検診を胃がんの早期発見の入り口としてぜひご活用いただくことが重要かと思います。
足立区の胃がん検診についてのご相談に関しては当院で承っています。
電話での予約は下記より承っています。
※2022年10月18日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2023年3月29日に再度公開しました。
・日本消化器がん検診学会全国集計委員会. 委員会報告平成28 年度消化器がん検診全国集計.日本消化器がん検診学会雑誌2019; 57: 1173-1185.
・幸田隆彦,他. 浜松市医師会における対策型胃内視鏡検診の現状.胃と腸2018; 53: 1090-1099.
・羽柴厚,他. 金沢市における対策型胃内視鏡検診の現状.胃と腸2018; 53: 1100-1110.
・三吉博,他. さいたま市における胃がんX 線・内視鏡併用個別検診の現況大宮地区のデータをもとに.日本消化器がん検診学会雑誌2015; 53: 571-578.
・小越和栄,他. 新潟市住民に対する胃がん内視鏡検診.日本消化器がん検診学会雑誌2009; 47: 531-541.
・川田和昭,村上隼夫:静岡市における対策型胃がん内視鏡検診の効率化に向けた取り組み.日本消化器がん検診学会雑誌2019; 57: 11-19.
・萩原廣明,他. 対策型検診における胃内視鏡検査の有用性.日本消化器がん検診学会雑誌2015; 53: 376-382.
・Hamashima C, et al. Acommunity-based, case-control study evaluating mortality reduction from gastric cancer by endoscopic screening in Japan. PLoS One 2013; 8: e79088.
・Hamashima C, et al. Mortality reduction from gastric cancer by endoscopic and radiographic screening. Cancer Sci 2015; 106: 1744-1749.
・Jun JK, et al. Effectiveness of the Korean National Cancer Screening Program in Reducing Gastric Cancer Mortality. Gastroenterology 2017; 152: 1319-1328. e7.
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