「最近便が少しゆるいな・・・下痢もたまにあるし。外食が続いてるせいかな。まぁ、大丈夫だろ・・・」
というようなことはないでしょうか?大腸のご病気の場合、症状がでる状態になった場合にはある程度進行した状態となっていることがあります。大腸ポリープや大腸がんなどでは、初期に症状が出ることはほとんどありません。
とくに大腸ポリープは、特徴的な症状も進行しないと分からないため、何らかのきっかけやちょっとした症状が出た場合には専門外来での診察や検査を受けることが非常に大切です。
大腸ポリープは、進行すると大腸がんになることがあります。その場合には、手術や化学療法などの侵襲の強い治療が必要となることがあります。本記事を読むことで、大腸ポリープの症状や性質などを理解して、検査の重要性などの理解を深めていただけますと幸いです。
1章、大腸ポリープの症状とは
大腸ポリープの症状には、いくつかの症状を示すことがあります。その症状とは、
・血便
などが大腸ポリープの症状としてよく言われているものではあります。しかしながら、お腹の症状と大腸ポリープの関係を示したEvidence(根拠)に関しては、あまり報告されていないのが現状なのです。
大腸がんに関しましては、血便と体重減少という症状に関しては強い因果関係があるとされています。大腸ポリープと症状の関係については、どのようになっているのか解説していきたいと思います。
1-1、こんな症状は大腸ポリープを疑う
大腸ポリープに関しては、かなり大きくならないと特徴的な症状が出ることはありません。ある程度の大きさの大腸ポリープの場合には、下記のような症状が出る可能性があります。このような場合には、積極的に大腸カメラを行い大腸ポリープの有無を調べることをお勧めします。
・血便
・排便習慣の変化
・便秘
・腹痛
・体重減少
一つ一つ解説していきたいと思います。
慢性的な下痢症状
「慢性的な下痢」に関しては、大腸ポリープの可能性があります。「慢性的な下痢」が存在する場合には、積極的に大腸カメラを受けることをお勧めします。
大腸ポリープがあるから下痢症状が出るというよりも、下痢症状が元々あるような方に大腸ポリープが存在するということもあります。アルコールの多飲や食生活が乱れている方の場合、下痢症状を呈する方が多い印象があります。そのような方の場合には、大腸ポリープや大腸がんのリスクが高い可能性があります。
血便
大きなサイズの大腸ポリープが便などに擦れて出血した場合には、血便として症状が出ることがあります。ただし大量に出血しないと気付かない可能性が高いです。
大きなサイズの大腸ポリープでは、大腸の奥の方(盲腸や上行結腸)の出血の場合、血便として認識できない可能性もあります。反対にS状結腸や直腸などの肛門に近い場合には、血便として認識できる可能性が高くなります。
中くらい以下のサイズの場合には、血便として認識できる出血をすることは稀です。直接大腸内視鏡検査を行う必要があります。
「排便習慣の変化」「便秘」「腹痛」「体重減少」は、大腸がんではある程度認められる可能性がある症状です。大腸ポリープでもある程度の大きさなどになると認められる可能性がある症状です。ただし、大腸ポリープで必ず認められるというわけではありません。
1-2、大腸ポリープは深刻な病気ではない!
なぜ深刻ではないかというと、
②ほとんどの大腸ポリープは外来で切除できる
③大きな大腸ポリープでも“がん成分”が混ざっていなければ内視鏡切除で根治となる
④“がん成分”が混ざっている大腸ポリープでも進行していなければ内視鏡切除で根治となる
以上のようにほとんどの大腸ポリープは、内視鏡での切除で対応が可能であり「深刻な病気とは言えない」ということになります。
ただし、大腸ポリープというご病気は、症状がはっきりとしないことが多いため適切な時期に検査をして早期発見をしない場合には、がん化して進行してしまうことがあります。反対に言うと、進行しないと症状が出ないとも言えます。
進行した場合には、内視鏡での治療ができなくなることもあります。このような場合には、外科手術や化学療法などより侵襲の強い治療が必要になることもあり得ます。
できるだけ適切な時期に検査を行い、適切な治療を受けていただくことが大切です!
1-3、大きな大腸ポリープは注意が必要
大腸ポリープは、進行するとがん化します。大きなサイズの大腸ポリープには、がん成分が混ざっていることがあります。
大腸ポリープの大きさが20mm以上の場合には、2~3割程度の確率で“がん成分”が混ざると言われています。
そのため早期に大腸ポリープを発見して、早い段階で大腸ポリープを切除することが望ましいです!
*大腸ポリープのサイズとがん化率に関しては、「大腸ポリープってどんな病気で、なぜ切除しなければならないの?」で詳しく解説していますので、参考にしてください。
1-4、大腸ポリープの稀な症状
大腸ポリープでは稀ですが、粘液性の白い透明な下痢状の便が出ることがあります。これは絨毛腺腫という比較的大きな大腸ポリープが直腸にできることがあります。大きなものだと10cm以上になるポリープです。
このようなポリープの場合には、大量の下痢がでるため脱水症状がでたり電解質異常や腎不全などになり命に関わることもあり得ます。
粘液性の透明な下痢を認める場合には、早急に大腸カメラで検査が必要です。
1-5、ほとんどの大腸ポリープは症状が無い!
上記のように大腸ポリープは、ある程度の大きさとなると何らかの症状を呈することがありますが、小さいサイズに関しては基本的に症状が出ることはありません。
とくに数mm程度の大きさの大腸ポリープに関しては、症状が出ることはありません。そのため早期の段階で大腸ポリープを切除するためには、がん検診や人間ドックなどで大腸検査を受けてもらう必要があります。
以上のように大腸ポリープは、特徴的な症状は乏しいためどのような場合に専門の診察や大腸検査を受けなければならないのかが分からないため不安であると思います。
2章以下では、大腸ポリープ自体のことを解説しつつどのようなタイミングで大腸検査を受けるべきかを理解していきたいと思います。
2章、大腸ポリープとは
大腸ポリープは、大腸(直腸~盲腸)にできるキノコ状の突起物です。良性のものもあれば、悪性のものもあり、さらに前がん病変というようなものまで様々なポリープがあります。この章では、大腸ポリープとはどのようなものなのかということについて解説したいと思います。
2-1、大腸ポリープの定義
少し難しいと思いますので、大腸ポリープを噛み砕いて表現すると以下のようになります。
大腸の粘膜の表面にできるキノコ状の突起物です。良性でも悪性でも大腸ポリープと呼ばれています。
2-2、大腸ポリープの種類
上述のように、大腸ポリープには良性のもの悪性のものなど全ての突起物が含まれるため様々なものがあります。組織学的に分けると以下のようなものがあげられます。
・鋸歯状ポリープ
・がん
・炎症性ポリープ
・過誤腫性ポリープ
・リンパ組織性ポリープ
・間質性ポリープ
上記のように様々なポリープがありますが、一般的に世の中で言われているポリープとは「腺腫性ポリープ」のことを言います。下記の写真は腺腫性ポリープです。
2-3、大腸ポリープの原因および要因
大腸の正常な粘膜に何らかの刺激やストレスが加わることで、遺伝子に異常が発生します。これが原因となり、大腸にポリープができると考えられています。大腸ポリープに関係する遺伝子としては、以下のようなものがあります。
・K-ras遺伝子
・p53遺伝子
一つ一つ簡単に解説していきたいと思います。
APC遺伝子
5番染色体長腕(5q21)に位置する遺伝子。がん抑制遺伝子の一つ。APC遺伝子は、細胞増殖をコントロールすることに重要な役割を果たしていますが、一旦遺伝子に異常が生じると大腸腺腫の発生と大腸がんへの進展を早める可能性があると言われています。
K-ras遺伝子
Ras(ラス)とは、発がんや細胞の増殖に関与するたんぱく質のことをいいます。K-ras(ケーラス)は、12番染色体に位置する遺伝子です。K-ras遺伝子に異常が生じると変異が起こり、異常なRasたんぱく質が作られ大腸がん・膵がん・肺がんなどが発生しやすくなると言われています。大腸ポリープのがん化に関与すると言われている。
p53遺伝子
17番染色体短腕(17p13)に位置する遺伝子。がん抑制遺伝子の一つ。遺伝子異常がp53遺伝子に起こると腫瘍抑制活性を失い発がんやがんの進展に影響を及ぼすと言われています。大腸ポリープのがん化に関与すると言われている。
以上のような遺伝子異常が大腸ポリープと深くかかわりがあるとされています。その他下記のような要因も大腸ポリープの発生と係わりがあるとされています。
①生活習慣にかかわる要因
・飲酒(もしくは過去にしていた)
・赤肉(牛肉、豚肉など)をよく食べる
・運動不足
・肥満
②病気に関わる要因
・脂質代謝異常(コレステロール高値)
・NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)
・IBD(炎症性腸疾患)
・ピロリ菌感染
内視鏡診療を行っていますと、上記のような要因で2~3個当てはまるような方には大腸ポリープが必ず発見されると言っても過言ではありません。とくに男性で、喫煙・飲酒・運動不足の方に関しては、糖尿病や脂質代謝異常も併せて見られることも多く、大腸ポリープのリスクとしては非常に高いものと考えられます。
喫煙
喫煙に関しては、大腸ポリープとの因果関係が非常に強いと考えられています。大腸ポリープの1番のリスク因子といっても過言ではありません。過去に喫煙をしていた方も、ある程度のリスクがあると報告されています。タバコには、発がん物質が大量に含まれているため遺伝子異常をもたらして、大腸ポリープの発生に深く関わっていると報告されています。
飲酒
飲酒に関してても大腸ポリープとの深い関係があると言われています。とくに日常的に飲酒をしている方で、喫煙・運動不足・食生活が不規則などが伴う場合には大腸ポリープのリスクが非常に高いと考えられます。
NAFLD
NAFLDに関しては、インスリン抵抗性と肥満による炎症が大腸ポリープ発生に関わっていると言われています。
ピロリ菌感染
ピロリ菌感染に関しては、近年大腸ポリープとの関連があるのではないかと報告されてきていますが、定かな理由に関しては解明されていないのが現状です。
*ピロリ菌について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参考にしてください。
①生活習慣にかかわる要因や②病気に関わる要因に当てはまる方は、必ず45歳前後で大腸カメラを受けていただくことをお勧めします。
45歳前後で大腸カメラをお勧めする理由としては、いわゆるライフスタイルの西洋化となっている先進国において50歳以下での大腸がんや大腸ポリープの発生率が増加しているためです。
下のグラフは、米国の20-49歳の男女ともに2000年以降の大腸がんの発生率が増加していることを示しています。
American Cancer Society, Facts & Figures2017-2019.より抜粋
この増加は、日本でも同様で現在若年者の大腸がんの増加が見られていると言われています。大腸ポリープに関しても同様に増加が予想されています。
3章、大腸ポリープの検査
3章では、大腸ポリープの検査について解説したいと思います。
3-1、ゴールドスタンダードは大腸内視鏡検査!
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)は、直接大腸内を観察することで大腸ポリープの有無を確認することができます。さらに大腸内視鏡検査では、大腸ポリープを発見したらその場で切除することもできます。検査と治療が一気にできる非常に合理的な検査法です。
また大腸内視鏡検査では、大腸ポリープ(大腸腺腫)を切除することが大腸がんの予防になると言われており、非常に重要な検査と考えられています。
他の検査方法(便潜血検査・CTコロノグラフィー・大腸カプセル内視鏡など)については後述しますが、直接大腸ポリープを切除することはできません。検査でポリープが疑われる場合には、再度大腸内視鏡検査をしないといけないという2度手間がかかります。
大腸内視鏡検査の前処置
大腸内視鏡検査を行うためには、大腸前処置と言って下剤を飲んで大腸内をカラの状態にする必要があります。そのためには、下剤を飲まなければなりません。最近では下剤の効果が高い優れたものも出てきていますので、検査当日に下剤を飲んで2~3時間で前処置が済むようになってきました(個人によって効果が異なることがあります)。
とは言っても長時間下剤を飲み続ける必要があるため当内視鏡専門クリニックでは、大腸前処置を快適に過ごしてもらうために様々な取り組みをしています。
当クリニックで行っている取り組みをご紹介したいと思います。
大腸前処置を行う前処置室はプライベート性を重視
当クリニックでは、半個室もしくは完全個室を用意しており、皆様が快適に大腸前処置をしていただけるようにしています。
詳しくは下記をご参照ください。
下剤の内服については、「楽に大腸内視鏡検査を受けるための下剤内服!種類から費用・飲み方のコツまでを解説」でも詳しく解説していますので、ぜひご参考にしてください。
当クリニックでは、下記より大腸内視鏡検査の予約が可能です。
電話での予約は下記より承っております。
3-2、検診では便潜血検査で拾い上げ
大腸ポリープの検査としては、便潜血検査もあります。基本的には、便中に血の混じりが無いかどうかを見る検査ですので、ある程度の大きさにならないと大腸ポリープからの出血が無いため検査にひっかかることがありません。
検診などで多くの方から一定の人の拾い上げの検査としては有用ですが、便潜血検査自体で大腸ポリープがあるかどうかを確認することは困難です。
*便潜血に関しては、「便潜血陽性の場合には大腸カメラが必須な理由を解説」で詳しく解説していますので、ご参考にしてください。
3-3、その他の検査(大腸CT検査・大腸カプセル内視鏡など)
大腸ポリープのその他の検査方法としては下記のようなものがあります。
・大腸カプセル内視鏡検査
・注腸X線検査
それぞれについて解説したいと思います。
大腸の検査は、ほとんどが大腸内視鏡検査が主流となっています。上記の3つの検査は特殊な状況を除いて行われることが少ない検査ですが、内視鏡検査と異なり医師自ら検査自体を行う必要がないという特徴があります。
大腸CT検査
大腸CT検査(CTコロノグラフィー)では、大腸内視鏡検査と同様に下剤の内服をして大腸内をカラにする必要があります。大腸内視鏡検査では、検査中に腸管内の残便や下剤が貯留した液体を内視鏡スコープで吸引して腸管をキレイにしながら病変が見つけやすくしていきます。
大腸CT検査では、この残便や液体をキレイにすることができないためタギング(tagging)というヨードやバリウムといった経口造影剤を飲む必要があります。検査前には肛門に管をいれて二酸化炭素を注入することも必要です。
大腸内視鏡検査より楽だろうと考える方が多いかもしれませんが、現時点での大腸CT検査と大腸内視鏡検査を比べると、大腸カメラで静脈麻酔を使用して無痛で検査を行う方がお勧めできるかと思います。
ただし、スコープを腸管に入れられることに抵抗がある方や静脈麻酔をしたくないという方に関しては、選択肢の一つとしても良いかと思います。
大腸内視鏡検査と比べた、大腸CT検査の利点と欠点について下記の表にまとめましたので、参考にしてください。
大腸CT検査の利点 | 大腸CT検査の欠点 |
検査が受けやすい | 小さな病変に対して精度が悪い |
合併症が少ない | 放射線被ばくがある |
静脈麻酔の必要がない | 組織生検や治療ができない |
検査の質が均一 |
一番気になるのが、大腸CT検査の検査としての精度だと思います。10mm以上の大腸ポリープに関しては、大腸カメラとほぼ同等の検査の精度と言われており、見逃しはほぼ無いと考えられます。
5mm以下の大腸ポリープに関しては、検査としての精度が低くなると言われています。また、大腸ポリープを発見した場合には、再度検査を行う必要があるため注意が必要です。
大腸カプセル内視鏡
大腸カプセル内視鏡(colon capsule endoscopy;CCE)は、3cm×1cmほどの小型のカメラが内蔵しているカプセルを口から飲み込んで大腸の検査を行うものです。
やはり大腸カメラと同様に大腸の前処置をしなければなりません。下剤を飲んで大腸内をカラにしなければなりませんが、大腸カメラや大腸CT検査などよりも腸管内をさらにキレイにする必要があります。
CCEでは、大腸CT検査と同様に残便や下剤が貯留した液体を吸引してキレイにすることができません。また大腸CT検査では、タギングという手法がありますが、CCEでは残便や下剤が貯留した液体があると腸管の観察が困難となります。
さらにCCEでは、腸管内でのカプセルの進みを良くするためにboosterといって下剤を途中でさらに内服する必要があります。
CCEの検査は2日間ほどかかりますが、下剤は通常の大腸カメラの2倍ほど飲むことが想定されます。また、大腸カメラでは結果がその日に分かりますが、CCEでは、すぐに結果がでません。
現時点では、CCEと大腸カメラを比べると、静脈麻酔を使用した大腸カメラを受けていただくことを強くお勧めします!
注腸X線検査
大腸の検査方法として注腸X線検査がありますが、現在では外科手術前の評価法として行うことがありますが、ほとんどの場合行われることはありません。
3-4、検査の費用は?
検査の費用についてまとめたものをお見せしたいと思います。保険診療で3割負担の場合(目安)
費用 | |
---|---|
大腸内視鏡検査 | 3,000~13,000 円 |
大腸CT検査 | 6,000~9,000 円 |
大腸カプセル内視鏡 | 30,000~35,000 円 |
注腸X線検査 | 5,000 円 |
大腸カプセル内視鏡は、他の検査と比べ高額な理由としては、カプセル自体が8万円以上の費用がかかるためです。大腸内視鏡検査の自己負担費用(3割負担の場合)は、おおよそ3,000円~13,000円程度となっています(自己負担率によって変動します)。
*大腸内視鏡検査の費用については、「大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の費用はいくらかかるの?」で詳しく解説していますのでご参考にしてください。
4章、大腸ポリープの治療
大腸ポリープの切除方法には以下のように、CSP、HSP、EMR、ESDなど様々な方法があります。
4-1、内視鏡的大腸ポリープ切除術
内視鏡的大腸ポリープ切除術には、大きく分けて下記のように2つの方法に分かれます。
・HSP(Hot Snare Polypectomy; ホット・スネアー・ポリペクトミー)
CSPは、電流を流さないでスネアーという金属製の輪っかを引っかけて物理的にポリープを切除する方法です。一方、HSPも金属製のスネアーを用いますが、こちらは電流を流して焼き切るという方法です。
CSPもHSPも一長一短がありますが、小さな大腸ポリープ(10mm以下)に関しては、出血や穿孔のリスクがほぼないCSPでの治療が主流になってきています。
一方、大きなポリープや茎といってポリープの根元の部分が太く大きな血管が想定される場合には、HSPでの切除が望ましいと考えられています。
CSPとHSPに関してまとめたので参考にしてください。
CSP | HSP | |
---|---|---|
切除時の電流 | 不必要 | 必要 |
切除できる大きさ | 10mm以下 | 10mm以上も可能 |
術後出血率 | 低い | 高い |
穿孔のリスク | ほぼない | あり |
*CSPとHSPについては、「なぜ大腸ポリペクトミー(大腸ポリープ切除)はコールドがいいの?」で詳しく解説していますので、ご参考にしてください。
4-2、大きなポリープはEMRないしESDで治療
大腸ポリープの茎の無いタイプで大きなものに関しては、CSPやHSPでの切除が難しくなります。そのため、大腸の壁の粘膜下層という部位に局注剤(生理食塩水ないしヒアルロン酸ナトリウム)というものを入れて、粘膜を膨隆させてスネアーや電気メスで切除をする必要があります。
大きな大腸ポリープに関しては下記のような治療法があります。
・ESD(Endoscopic Submucosal Dissection; 内視鏡的粘膜下層剥離術)
EMR、ESDともに大きなポリープを切除する際に選択される治療法です。EMRの場合は、20mm以上のポリープに関しては、一括切除といって全て丸ごと一気に切除することが困難になることがあります。その場合は、分割切除といってポリープをいくつかに分けてスネアーで段階的に分けて切除を行います。
分割切除の場合は、再発の率が高くなると言われているためポリープに“がん成分”があると判断される場合には、一括で切除が可能なESDでの切除が望ましいと考えられています。
*ESDについては、「大腸がんの治療・大腸ESDってどんな治療なの?」で詳しく解説していますので、ご参考にしてください。
4-3、治療の費用は?
*大腸ポリープ切除の費用については、「内視鏡的大腸ポリープ切除術(大腸ポリペクトミー)の費用は?」で詳しく解説していますので、ご参考にしてください。
大腸ESDの費用は、1回の入院でおよそ40~50万程度かかります。高額医療費が適応されますので、自己負担限度額に関しては所得により異なります。
*大腸ESDの費用については、「大腸がんの治療・大腸ESDってどんな治療なの?」で詳しく解説していますので、ご参考にしてください。
4-4、治療の期間は?
大まかな治療の期間を表でまとめました。
治療法 | 入院の期間 |
---|---|
大腸ポリペクトミー | 小さなポリープは日帰り治療可 大きなポリープは1~2泊程度が必要 |
大腸EMR | 1~3泊程度が必要 (ポリープの大きさにより左右する) |
大腸ESD | 2~5泊程度が必要 (ポリープの大きさにより左右する) |
上記の入院期間は、あくまで目安です。ポリープの大きさ・存在する位置、併存疾患、常用薬、年齢などによっては入院の期間が長くなることもあります。
また、大きなポリープや“がん成分”が混ざった大腸ポリープなどの場合には、術後出血などの合併症のリスクが高くなります。合併症が起こった場合には、入院期間が長くなることもあり得ます。
5章、大腸ポリープの症状に関するQ&A
Q1、数年前に40代で複数の大腸ポリープを切除しました。その後症状などないため検査を行っていませんでしたが、どうすればいいのでしょうか?
若い時に複数の大腸ポリープが見られた方は、注意が必要です。症状が全くないからと言って放置すると危険です。複数個大腸ポリープを治療された方は、定期的な大腸カメラを行うことをお勧めします。
Q2、普段からお腹が緩くなりがちです。大腸検査は問題ありませんでしたが、なにか大腸ポリープの予防などあるのでしょうか?
大腸ポリープの原因として、肥満・糖尿病・脂質代謝異常などが挙げられこれらを予防する運動に関しては、やはり大腸ポリープの1番の予防になると考えられます。大腸がんの予防にもなると言われている運動ですが、大腸ポリープでも予防になると考えられており、定期的な運動がお勧めです。
とくに有酸素運動が良いと考えられています。
・ジョギング
・サイクリング
・水泳
などのゆったりと身体を動かして定期的(週2~3回、1回30分~60分程度)に行うことが望ましいと考えられています。
その他のものとしては、
・野菜
・果物
・ドライフルーツ
などが挙げられます。
上記のような食べ物に関しては大腸ポリープの予防になるのではないかと言われています。ただし、大量の果物やドライフルーツの摂取による過剰な果糖は、高血糖や糖尿病のリスクともなるため適度な量の摂取が望ましいと考えられています。
ドライフルーツに関しては、ミネラル・食物繊維・抗酸化物質が多く含まれておりダイエット・体内の炎症・高血糖などの予防に効果があるとも言われています。
*糖尿病やその予備軍と言われている方の場合は、血糖上昇の直接原因となる可能性があるため果物・ドライフルーツの大量摂取は控えていただくことをお勧めします。
まとめ
以上、大腸ポリープの症状を中心に検査から治療までを解説しました。本記事読んでいただき大腸ポリープについて理解を深めて適切な検査や治療を受けていただけたら幸いです。
以下に大腸ポリープの症状についてまとめました。
・大きな大腸ポリープの場合は症状が出ることがある
・小さな大腸ポリープは症状がほとんど出ない
・「慢性下痢」「血便」は大腸ポリープの可能性がある
・45歳前後で大腸カメラを受けることが大事
大腸ポリープの症状は、わかりづらいためとくに何も症状が無い方でも45歳になったら大腸カメラを受けることをお勧めします。
電話での予約は下記より承っています。
※2022年9月22日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2023年4月8日に再度公開しました。
・Wolin KY, et al. Physical activity and risk of colon adenoma: a meta-analysis. Br J Cancer. 2011; 104: 882-5.
・Sanchez NF, et al. Physical activity reduces risk for colon polyps in a multiethnic colorectal cancer screening population. BMC Res Notes. 2012; 5: 312.
・Wu H, et al. Fruit and vegetable intakes are associated with lower risk of colorectal adenomas. J Nutr. 2009; 139: 340-4.
・Smith-Warner SA, et al. Fruits, vegetables, and adenomatous polyps: the Minnesota Cancer Prevention Research Unit case-control study. Am J Epidemiol. 2002; 155: 1104-13.
・Mossine VV, et al. Dried Fruit Intake and Cancer: A Systematic Review of Observational Studies. Adv Nutr. 2020; 11: 237-250.
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