胃内視鏡検査(胃カメラ)における経口と経鼻の比較について

「鼻からの胃カメラが楽だった」
「口からのはキツイ」
「麻酔をしたら口からでもすごく楽だった」

などご友人やご家族からの話を聞くことがあるかと思います。

どの感想が正しいのか、実際に自分で受けてみないと分からないと思います。今回は、胃カメラ検査を2万件以上行ってきた内視鏡専門医が口からの胃カメラ(経口内視鏡)と鼻からの胃カメラ(経鼻内視鏡)の違いについて詳細に解説をしていきたいと思います。

本記事を読むことで、胃カメラを受ける際の参考にしていただけますと幸いです。

1章、経口内視鏡と経鼻内視鏡について

胃カメラには、大きく分けて口から内視鏡スコープを挿入する「経口(けいこう)内視鏡検査」と鼻から内視鏡スコープを挿入する「経鼻(けいび)内視鏡検査」の2つがあります。本章では経口内視鏡と経鼻内視鏡がどのようなものなのか解説したいと思います。

1-1、経口内視鏡とは

経口内視鏡検査は、口から内視鏡スコープを挿入して食道・胃・十二指腸を観察する検査です。通常『胃カメラ』と言われています。

検査自体は、のど麻酔をしてから検査台に乗って、左側臥位(左を下にする)で横になります。マウスピースを口にくわえてから内視鏡スコープを挿入していきます。マウスピースをくわえる理由としては、内視鏡スコープを噛んでしまわないようにするためです。

内視鏡スコープを噛んでしまうと、検査ができなくなり内視鏡スコープも壊してしまう可能性があるからです(内視鏡スコープは高ものだと数百万するものです)。

1-2、経鼻内視鏡とは

経鼻内視鏡検査は、左右どちらかの鼻の穴から内視鏡スコープを挿入して鼻腔を通過して咽頭そして食道へと内視鏡スコープを進めていきます。その後は、経口内視鏡検査と同様に食道・胃・十二指腸を観察します。通常『経鼻』と言われています。

経鼻内視鏡検査は、鼻の中およびのどの麻酔をしてから検査台に乗ります。左側臥位となり検査を開始していきます。経口内視鏡検査と異なりマウスピースをする必要はありません。

2章、経口内視鏡と経鼻内視鏡の違いについて

経口内視鏡検査と経鼻内視鏡検査にはそれぞれメリットおよびデメリットがあります。本章ではそれぞれのメリットおよびデメリットに関して解説したいと思います。

2-1、経口内視鏡のメリット・デメリット

経口内視鏡検査のメリットには以下のようなものがあります。

・画像の解像度が高く病変の観察能力が高い
・拡大観察ができる
・内視鏡の吸引能力(水を吸う力)が高い
・鉗子口径が大きいため様々な処置具を使用できる

以上が経口内視鏡検査のメリットとなります。では、経口内視鏡検査のデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。経口内視鏡検査のデメリットには以下のようなものがあります。

・内視鏡スコープが太いため嘔吐反射が起きる
・内視鏡スコープが太いため検査中にのどの違和感や胃の中に異物感を感じる

以上が経口内視鏡検査のデメリットとなります。

2-2、経鼻内視鏡のメリット・デメリット

経鼻内視鏡検査のメリットには以下のようなものがあります。

・内視鏡スコープが細いため鼻から挿入できる
・鼻からの挿入のため嘔吐反射が少ない

以上が経鼻内視鏡検査のメリットとなります。では、経鼻内視鏡検査のデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。経鼻内視鏡検査のデメリットには以下のようなものがあります。

・鼻の中(鼻腔)が狭い場合には挿入時に痛みが出る
・鼻の中(鼻腔)が狭い場合には鼻出血をすることがある
・画像の解像度は経口内視鏡スコープに劣る ・拡大観察ができない
・内視鏡の吸引能力(水を吸う力)が低い
・鉗子口径が小さいため使用できる処置具が限られる

以上が経鼻内視鏡検査のデメリットとなります。

2-3、経口内視鏡と経鼻内視鏡の違い

では実際の経口内視鏡と経鼻内視鏡の違いについて解説したいと思います。

内視鏡スコープの太さの違い

経口内視鏡と経鼻内視鏡の違いは、一番の違いはスコープの太さが違います。当クリニックでも導入しているオリンパス社の最新の経口内視鏡スコープであるGIF-XZ1200の太さは最大9.9mmで約1cmです。

一方、オリンパス社の最新の経鼻内視鏡スコープであるGIF-1200Nですが、こちらの太さは最大5.8mmとなっています。フジフィルム社の内視鏡スコープもほぼ同様の太さとなっています。

オリンパス GIF-1200N

嘔吐反射についての違い

下図のように口からの内視鏡検査の場合には、舌の付け根に内視鏡スコープが当たるため”オエッ”というように嘔吐反射が起こります。一方、鼻からの内視鏡検査の場合には舌の付け根に内視鏡スコープが当たらないため嘔吐反射は起こりにくいです。

経鼻内視鏡であるGIF-1200Nは極細ですので、のどを通過する際にある程度の違和感はあるもののとくに静脈麻酔の必要はないと思われます。ただし鼻の中(鼻腔)に挿入する際に鼻腔が狭い方がいらっしゃいます。

鼻腔が狭い場合には、挿入の際に痛みが生じる可能性があります。この痛みは個人差がありますので一概にどの程度とは言えませんが、多くの方は“我慢できる程度”と言うことが多いです。

一方、経口内視鏡であるGIF-XZ1200の場合、約1cmの太さのスコープですので意識がある状態でこのスコープをのどに入れられるというのは大変キツイです(わたしは嫌です)。はっきりと言いまして静脈麻酔なしに経口内視鏡での検査はお勧めしません。もう一度言います。そこそこつらいです。

ただしこのつらい検査に耐えられる方もいらっしゃいます。どのような方かといいますと、のどの反射がほとんどない方です(御高齢の方が多いです)。歯ブラシを誤ってのど奥に入れてしまった場合にオエオエと反射が起こる方は、間違っても静脈麻酔なしに経口内視鏡での検査を選択するのはやめた方が無難です。

反対に静脈麻酔をすれば楽に検査が可能です。眠った状態で検査を受けれるため気が付いたら検査が終了していたというような形で検査を受けれます。

静脈麻酔については「内視鏡検査における静脈麻酔(鎮静剤)のメリットとデメリットとは?」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

画質についての違い

経鼻内視鏡のスコープは鼻の中を通過しないといけませんのでかなり細い構造となっていますが、GIF-1200Nはハイビジョンの高画質を実現しています。しかしながら、画質はスコープの太さにある程度依存しますので、経口のGIF-XZ1200の画質は経鼻のGIF-1200Nよりさらに高画質となっています。

拡大観察の有無の違い

経口内視鏡であるGIF-XZ1200では、拡大内視鏡検査ができます。一方、GIF-1200Nでは拡大内視鏡が装備されていません。我々内視鏡医にとってこの拡大内視鏡は非常に重要な技術となっています。

検査中に腫瘍などを疑う場合には、この拡大内視鏡を用いて画面をズームにして細かく病変の粘膜や血管などを観察します。GIF-XZ1200では、最大125倍のズームが可能で対象とした病変を詳細に観察することができます。

最近ではピロリ菌を除菌された方が増えていますが、ピロリ除菌をすると胃の腫瘍は不明瞭となり形や色が変形するため非常に分かりづらくなります。そのよう場合に拡大内視鏡が装備されているとズームをして詳細に観察することである程度腫瘍と非腫瘍の見分けがつくことがあります。

鉗子口径の違い

スコープの太さは鉗子口というスコープにある穴の太さにも影響していきます。この鉗子口という穴を通して胃の中の余分な液体を吸引したり生検鉗子という組織を採取する道具を挿入したりなどします。この鉗子口の大きさは、GIF-XZ1200では2.8mmですが、GIF-1200Nでは2.2mmとなっています。わずか0.6mmの差ですが、この差が私たち内視鏡医にとってはかなりの違いを感じます。

胃カメラでは、胃の中を観察する際に胃液を吸引しないと十分な観察ができません。この胃液の中には、人によっては痰などの粘調度の高いドロドロとした液体が混ざっていることがあります。2.8mmのGIF-XZ1200では比較的楽に吸引できることがほとんどですが、GIF-1200Nの2.2mmではなかなか吸引できなくて時間がかかったり、場合によっては吸引できなくて不十分な検査につながることもあり得ます。

3章、経口・経鼻どちらを選ぶべき

一長一短がある経口内視鏡と経鼻内視鏡ですが、検査時にどのように選択すればいいかと言いますと、状況に応じて選択するのが良いと思います。

胃内視鏡検査は午前に行うことがほとんどです。当日の午後から車や自転車などを使用する予定がある場合や大事な仕事があるなどの場合には、経鼻内視鏡をお勧めします。当日とくに用事が無く、車・自転車などを使用することが無い場合には、静脈麻酔を使用して経口内視鏡での楽な検査をお勧めします。

静脈麻酔を行わずにどうしても口からの経口内視鏡をご希望される方に関しては、経鼻内視鏡スコープを使用して口から検査をすることも可能です(極細のスコープですので口からの挿入でもある程度楽に検査ができます)。

皆様が選ぶ基準(楽に検査を受けてもらう)としては、

① 経口内視鏡検査(静脈麻酔あり)
② 経鼻内視鏡検査(静脈麻酔なし)
③ 口から経鼻スコープを使用した経口内視鏡検査(静脈麻酔なし)
④ 経口内視鏡検査(静脈麻酔なし)

の順番で検査を選んでいただければと思います。

4章、経口内視鏡検査・経鼻内視鏡検査の費用について

本章では、経口内視鏡検査・経鼻内視鏡検査の費用について解説したいと思います。

*保険診療のため、自費診療(人間ドック)を除いてどの医療機関で検査を受けてもほぼ同様の費用となります。ただし使用する薬剤によっては費用が一部変動することもあり得ます。

4-1、経口内視鏡検査の費用は

経口内視鏡検査の支払い総額である自己負担費用は、

2,000円~10,000円程度(自己負担が1~3割によって費用が異なります)

となっています。

経口内視鏡検査は、診療報酬では1,140点となっており11,400円となります。3割負担の場合には、3,420円が胃内視鏡検査の費用となります。

そのほかに、薬剤・狭帯域光強調加算・粘膜点墨法加算や組織を採取した場合には内視鏡生検法・病理組織顕微鏡検査の費用がかかります。

経口内視鏡検査の費用については「胃内視鏡検査(胃カメラ)の費用はいくらかかるの?」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

4-2、経鼻内視鏡の費用は

経鼻内視鏡検査の支払い総額である自己負担費用は、経口内視鏡検査と同様に

2,000円~10,000円程度(自己負担が1~3割によって費用が異なります)

となっています。

経鼻内視鏡検査は、診療報酬では1,140点となっており11,400円となります。3割負担の場合には、3,420円が胃内視鏡検査の費用となります。

そのほかに、薬剤・粘膜点墨法加算や組織を採取した場合には内視鏡生検法・病理組織顕微鏡検査の費用がかかります。

経鼻内視鏡検査の費用については「経鼻内視鏡検査(経鼻カメラ)の費用はいくらかかるの?」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

まとめ

今回は経口内視鏡検査と経鼻内視鏡検査の比較を解説しました。経口内視鏡検査と経鼻内視鏡検査の比較のポイントとしては以下のようになります。

・経口内視鏡検査は高画質で拡大観察ができる
・経鼻内視鏡検査は嘔吐反射少ない
・経鼻内視鏡検査は鼻痛や鼻出血が起こることがある
・静脈麻酔を使用すれば経口内視鏡でも楽に検査が可能

以上のポイントを理解して検査を選んでいただければと思います。

当クリニックでは24時間WEBにて検査予約が可能です。検査についてどのように選択すべきかでお悩みの場合には外来予約ないし検査当日にご相談いただけたらと思います。

電話での予約は下記より承っています。

※2021年9月14日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2023年2月22日に再度公開しました。

施設紹介

東京千住・胃と大腸の消化器内視鏡クリニック 足立区院 >>

ホームページ https://www.senju-ge.jp/

電話番号 03-3882-7149

住所 東京都足立区千住3-74 第2白亜ビル1階

診療時間
9:00~12:00
14:00~17:30

※予約検査のみ
※祝日のみ休診

アクセス

JR北千住駅西口より徒歩2分、つくばエクスプレス北千住駅より徒歩2分、東京メトロ日比谷線北千住駅より徒歩2分、東京メトロ千代田線北千住駅より徒歩2分、東武伊勢崎線北千住駅より徒歩3分

施設紹介

秋葉原・胃と大腸肛門の内視鏡クリニック 千代田区院 >>

ホームページ https://www.akihabara-naishikyo.com/

電話番号 03-5284-8230

住所 東京都千代田区神田佐久間町1-13 チョムチョム秋葉原ビル9階

診療時間
9:00~12:00
14:00~17:30

※予約検査のみ
※祝日のみ休診

アクセス

JR秋葉原駅より徒歩1分、東京メトロ日比谷線秋葉原駅より徒歩1分、つくばエクスプレス秋葉原駅より徒歩1分

施設紹介

医療法人社団 哲仁会 井口病院 >>

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※2【全体】 水曜のみ、混雑緩和のため、受付を13時00分より開始いたします。

アクセス

JR北千住駅西口より徒歩3分、つくばエクスプレス北千住駅より徒歩3分、東京メトロ日比谷線北千住駅より徒歩3分、東京メトロ千代田線北千住駅より徒歩3分、東武伊勢崎線北千住駅より徒歩4分

尚視会での内視鏡検査・診察は24時間予約を承っています。

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