なぜ40代で大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受ける必要があるの?

大腸検査

大腸がんは、加齢とともにその発症率が高くなるご病気です。とくに40代を過ぎると男女ともに大腸がんの発生率は増加すると報告されています。

大腸がんを予防するためには、以下のことが大切と考えられています。

・適切な年齢で大腸内視鏡検査を受ける
・大腸内視鏡検査を受けて大腸ポリープが発見されたら切除をする

大腸がんの発生率が増加してくる40代で一度は大腸内視鏡検査を受けていただき、大腸ポリープが発見されたらその場で切除をすることが望ましいと考えられています。本記事では、40代で大腸内視鏡検査を受けるべき理由および大腸ポリープを切除することの大切さについて解説したいと思います。

1章、40代で大腸内視鏡検査を受けるべき理由

大腸がんは、年間死亡数が5万人を超えており肺がんに次ぐがん死亡原因の疾患として極めて重要なご病気と考えられています。女性においては、大腸がんはがん死亡原因1位ということもあり早急に対策が必要となっているのが現状です。

1-1、40代で大腸がん発生率は上昇する

大腸がんは40代になると男女ともに発生率が上昇する。

がん情報サービス・がん種別統計情報大腸より抜粋

上記のグラフより大腸がんは、男女ともに40代になると罹患率が上昇していく疾患です。

外来で患者さんから何歳くらいで大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けるべきかという質問を受けることがあります。基本的には、がん発生率が上昇してくる40代で一度は大腸内視鏡検査を受けることをお勧めしています。

下記に当てはまる場合には、必ず40代で一度は大腸内視鏡検査を受けることが望ましいです。

・食事内容が偏っている
・運動不足
・飲酒の習慣がある
・喫煙をしている
・肉類(赤肉、加工肉)が好き
・肥満傾向がある
・糖尿病がある
・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎)と診断されている
・高身長である

以上は大腸がんのリスクであると言われています。上記に当てはまる場合には、一度消化器の専門外来で相談していただくことをお勧めします。

大腸がんのリスクについては、「大腸がんの原因と予防法を専門医が解説|日頃の工夫と定期的な検査が大切」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

1-2、症状などがある場合には年齢に関係なく大腸内視鏡検査を受けるべき

大腸がんは近年若年化しており20代・30代の方でもかかるご病気として認識されているがんの一つです。とくに欧米では高齢者の大腸がん発症率は低下してきており、反対に20代・30代といった若者の大腸がんが増えてきています。日本の大腸がんの発症率に関しても、今後欧米の後を追っていくものと推測されています。

下記のような場合には、年齢に関係なく検査を受けることをお勧めします。

・何らかの症状がある(血便・慢性的な下痢症状など)
・便潜血検査が陽性と診断された
・ご家族に遺伝性の大腸疾患(家族性大腸腺腫症・リンチ症候群など)などがある場合

以上のような場合には年齢にかかわらず検査を受けていただくことが必要です。

1-3、症状が無い人は45~50歳で大腸内視鏡検査を受けるべき

症状が無い場合には、45~50歳の間で大腸内視鏡検査を受けるべき。

症状などが全くない方に関してはといいますと、45歳~50歳のご年齢の間で大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けていただくことが重要と考えられています。

というのも現在大腸がんは世界的にみて50歳以上の年齢よりもそれ以下の若年者において発生率は上昇傾向であり、日本においても若年化の傾向がみられています。昔は大腸がんというとご年配の方がかかるご病気という印象がありましたが、現在では30代後半や40代というご年齢でもさほど珍しくないご病気となってきています。

1-4、便潜血検査は大腸内視鏡検査の代わりにはならない

便潜血検査を大腸内視鏡検査の代わりとするのは危険。

大腸がんの検査の一つとして便潜血検査があります。便潜血検査が陽性となった場合には、大腸がんの可能性があるということで、精密検査として大腸内視鏡検査を受けることとなります。

一方、便潜血検査が陰性となった場合には、問題なしということで、精密検査の大腸内視鏡検査を受けることはありません。確率的には高いものではありませんが、便潜血検査が陰性の場合でも大腸がんや大腸ポリープが存在することがある一定の確率であります。いわゆる偽陰性となってしまうことがあり得ます。

大腸がんが初期の場合や大腸ポリープが小さい場合には、病変から出血する可能性が低いのです。ある程度大きくなったり進行しないと病変から出血しません。便潜血検査は、初期の段階で病変を拾い上げるのに適している検査とは言えないのです。

そのような理由のため、便潜血検査で陽性となることが無い場合でも、45歳以上となった場合には一度は大腸内視鏡検査を受けていただくことをお勧めします。

1-5、便潜血陽性であれば年齢に関係なく大腸内視鏡検査を受けるべき

45歳~50歳のご年齢でお腹の症状のある方は、必ず大腸内視鏡検査(大腸カメラ)受けていただくことをお勧めします。この年齢の間で症状のない方は、市の検診などで便潜血検査(2日法)を受けていただき1日でも陽性となった場合は大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けてもらうことが大事です。

1-4で解説したように、便潜血検査が陰性だからといって、大腸がんが必ず無いということではありません。実際の診療では、便潜血検査が陰性だったという方でも大腸がんであったという方は数多くいらっしゃいます。多数の患者さんから大腸がんの可能性があるという方を拾い上げるという意味では、便潜血検査は非常に万能な検査ではあります。一方、個々人に対してといいますと、また違った問題となってきます。

症状が無く便潜血検査が陰性であったとしても時間的余裕や経済的に問題が無いということであるならば人間ドックなどで、50歳というタイミングで大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けていただくことがご自身やご家族にとって意味のある行為かと考えられるかと思います。

2章、大腸ポリープ切除は大腸がんの予防となる

大腸内視鏡検査を受けて大腸ポリープが発見されたら必ずポリープを切除することが大切。

この章では、大腸ポリープに対してどのように対処していくべきか、そして大腸ポリープ切除の大切さについて解説していきたいと思います。

2-1、大腸ポリープが発見されたらその場で切除をお勧め

大腸ポリープが発見されたらその場で切除することが望ましいです。なぜならば、その場で切除しない場合には、再度別日に大腸の前処置を行い再検査を行う必要があるからです。下記のような場合には、その場で切除をお勧めします。

・出血のリスクが低い小~中くらいの大きさの大腸ポリープ
・抗血栓薬を複数内服していない
・重大な疾患に罹っていない(肺疾患・循環器疾患・血液疾患など)

上記のように出血のリスクが低く大きなご病気に罹っていない場合には、その場で切除が可能です。

2-2、大きな大腸ポリープは入院での切除が望ましい

その場で切除が出来ない場合には、入院での切除が必要となります。どのような場合に入院での切除が必要かというと、

・出血のリスクが高い大きな大腸ポリープ
・抗血栓薬を複数内服している
・重大な病気に罹っている(肺疾患・循環器疾患・血液疾患など)

上記のような場合には、入院で安全に切除をする必要があります。大きな大腸ポリープや出血傾向がある場合には、大腸ポリープを切除した部位から出血することがあるため入院で安静にする必要があるためです。

基本的には、大腸ポリープ切除後の出血は切除後24時間以内に出血する可能性が高いため1泊2日で退院が可能です。ただし出血のリスクが高いと想定される場合には2泊ないし3泊の入院が必要になることもあります。

大腸ポリープ切除後の出血に関しては、「24時間以内に起こることが多い大腸ポリープ切除後の出血;出血した場合にはどうすればいいの?」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

2-3、大腸がんの予防のためには定期的な大腸ポリープ切除が大事

大腸ポリープである大腸腺腫(アデノーマともいいます)は、前がん病変と言われており大きくなると「がん化」します。

大腸内の大腸腺腫を全て切除した状態をクリーンコロンと言います。前がん病変である大腸腺腫を全て摘除してクリーンコロンの状態にしていくことで、大腸がんによる死亡率を低下させるという効果があると報告されています。

大腸がん予防のためには、定期的に大腸カメラを行い大腸ポリープを切除してクリーンコロンを保つことが何よりも重要です!

まとめ

今回は、「なぜ40代で大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受ける必要があるの?」について解説しました。本記事のポイントとしては、

・40代を過ぎると男女ともに大腸がんの発生率は増加する
・適切な年齢(40代)で大腸内視鏡検査を受けることが大切
・大腸ポリープが発見されたらその場で切除をする
・クリーンコロンで大腸がん予防

以上を理解して大腸がん予防の一助にしていただければと思います。

当クリニックでは、下記より大腸内視鏡検査の予約を承っています。

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※2021年12月28日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2023年2月20日に再度公開しました。

Winawer SJ, et al. Prevention of colorectal cancer by colonoscopic polypectomy. The National Polyp Study Workgroup. N Engl J Med 1993; 329: 1977-1981.
Zauber AG, et al. Colonoscopic polypectomy and long-term prevention of colorectal-cancer deaths. N Engl J Med 2012; 366: 687-696.

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