胃MALT(マルト)リンパ腫とは
胃のリンパ濾胞(ろほう:体の組織である卵巣、甲状腺、下垂体などの内分泌腺にある完全に閉じた袋状のもの)から腫瘍ができる疾患です。
リンパ腫ができてもゆっくり経過する傾向にあるのですが、「大細胞型びまん性リンパ腫」という悪性リンパ腫へ移行するケースがあります。
なお、リンパ球にはBリンパ球とTリンパ球の二種類に分かれますが、胃MALTリンパ腫はBリンパ球の腫瘍に分類されます。また、胃のリンパ腫は胃MALTリンパ腫も含めて、胃がんよりも極めて発症する確率が低い疾患です。
原因
理論上は、体内でしたらどこにでもMALTリンパ腫が発生し得るのですが、胃にできるリンパ腫の場合、その約80%は、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍・胃がんの原因となるヘリコバクター・ピロリ菌の感染によるものです。
胃の中には塩酸があるため、細菌は生息できません。しかしヘリコバクター・ピロリ菌は胃酸を中和する分泌物を出す機能を持っているため、胃の中でも生き残ることができ、あらゆる疾患を引き起こします。
とはいえ、ヘリコバクター・ピロリ菌が棲みついていて、実際に胃MALTリンパ腫を発症する方はかなり少ないです。「どのような方が胃MALTリンパ腫を発症するのか」は、いまだにはっきりと解明されていません。
残りの20%にあたる方の原因についてですが、その中の約50%は「AP12MALT1」という遺伝子の異常が原因で発症していることが分かりました。ただし、この遺伝子異常がどうして起こるのか、そのメカニズムは解明されていません。
さらに残り50%の原因についてもはっきりされておらず、現代医学においても謎が多い疾患です。
主な症状
症状がみられても比較的軽度であるケースが多く、健康診断などで発見される方がほとんどです。主な症状は、以下の通りです。
- 腹痛
- 上腹部の不快感
- 胸焼け
- 吐血(時々みられる)
検査・診断方法
胃カメラ検査を受けていただいてから、確定診断していきます。
胃カメラで胃MALTリンパ腫が疑われましたら、組織を採取して病理検査を行い、確定診断します。診断には通常の病理検査に加えて、リンパ球の特殊染色検査やAPI2MALT1遺伝に異常が起きていないかを調べる検査など、複数の検査を受けていただきます。
また、発症した原因をはっきりさせるために、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染しているかを調べる検査(尿素呼気試験、抗体検査など)も必要に応じて受けていただく場合もあります。
治療
内視鏡などを受けていただいた結果「胃MALTリンパ腫があり、かつ悪性リンパ腫ではない」と判断された方には、ヘリコバクター・ピロリの検査も受けていただきます。
ピロリ菌が陽性の場合
1週間ほど抗生剤を服用する除菌療法で治していきます。ピロリ菌の除菌療法は約90%の確率で成功し、その中の約80~90%の方は胃MALTリンパ腫も治ると言われています。
また、同時に遺伝子検査も行い、API2MALT1の異常が起こっていないかを確認するのも有効です。
ピロリ菌の除菌療法を受けても治らない場合や進行した場合、悪性リンパ腫へ移行した場合は、放射線療法や薬物療法、胃の切除手術を受けていただきます。これらの治療を受けた方の多くはきちんと治っているため、友好的な治療法と言えます。
ピロリ菌が陰性の場合
遺伝子検査を受けていただきAPI2MALT1遺伝子に異常があった場合は、放射線療法や薬物投与、手術を受けていただきます。
ただし、遺伝子異常からくる胃MALTリンパ腫の場合は、悪性リンパ腫に移行する可能性が極めて低いため、経過観察で済ますこともあります。
原因が分からない胃MALTリンパ腫の場合は放射線治療や薬物治療、手術を検討します。悪性リンパ腫に移行する恐れもあるため、根治させる治療法が重要です。
なお、胃MALTリンパ腫は治っても完全に消失しないケースもあります。この場合はがんと異なり、経過観察を行ってリンパ腫が大きくならないかどうかを定期的に確認します。
胃カメラ検査の予約方法

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