「胃カメラは口からと鼻から、どっちの方が楽なんだろう?」
「口から胃カメラは気持ち悪くて吐きそうになるから出来ればやりたくない」
「かと言って、鼻から入れるのは痛いんじゃ・・?」
このように思ったことはありませんか?
胃カメラを実施する方法が2種類あり、鼻から入れる方法と口から入れる方法です。鼻から入れる場合は、多くの場合口から入れるのが苦手な人が選択します。
当然日常的に鼻に内視鏡のような管状のものを入れるようなことはないと思いますので、少し気持ち悪いかもしれません。
ただ、口から入れるよりは負担は軽く、経験ある医師に依頼することで和らぐこともあります。
本記事では、鼻から入れる胃カメラについて、口から入れる時との違いを比べながら解説していきます。
今後胃カメラをする可能性がある方や、医師に鼻から入れる胃カメラを提案された方は、本記事の内容を参考にしてみてください。
1章、 胃カメラは鼻より口から入れた方がいいのか?
胃カメラを実施するには2種類の方法があります。それは、口から内視鏡を入れて行う「経口内視鏡検査」と、鼻から内視鏡を入れて行う「経鼻内視鏡検査」です。
多くの方は「痛そう」「気持ち悪くなりそう」など、どっちの方法で検査するにも辛そうなイメージを持っているでしょう。これではどちらの方法を選べばいいのか分かりませんよね。
今回は、口から入れる場合と鼻から入れる場合、それぞれの特徴に触れながらおすすめの方法について解説していきます。
1-1、口からの胃カメラが苦手な人は鼻からをおすすめ
口から入れる胃カメラを行う場合、次のようなデメリットがあるからです。
・舌の付け根の辺りにスコープが触れて「オエッ」っと吐きそうになる。
・検査中は鼻だけで呼吸しなければいけないため苦しい。
・検査中に会話ができない
こういったデメリットをできるだけ避けて胃カメラを受けたい人は、鼻からの胃カメラを検討しても良いでしょう。
また、鼻から入れて行う胃カメラの時に使う内視鏡の方が太さが細いため、検査中に感じる痛みや圧迫感も少なくなります。
検査を受ける側の負担としては、口からよりも鼻からの胃カメラの方が軽いです。
1-2、胃カメラを鼻から入れる場合の痛み
口から胃カメラを入れた場合、喉の部分を通過する時の刺激で痛みを感じることがあります。しかし、鼻から胃カメラを入れた場合は喉を通過しないため痛くありません。
胃カメラで消化管内を観察した結果、その場でポリープを切除することがありますが、その場合も痛みはほとんどありません。胃や腸の粘膜の粘膜には痛みを感じる神経がないからです。
粘膜周辺にある神経が多少影響を受けることがあるかもしれませんが、なんとなく違和感がある程度で済みます。また、どうしても痛みが心配な場合は鎮静剤を使って検査することもできるため、気軽に医師と相談してみましょう。
口からの胃カメラと異なり喉を通過する際の痛みは少ないのですが、一部の人で鼻腔内が狭い方がいます。鼻腔内が狭い場合には、カメラが鼻の中を通過する際に痛みがでることがあります。またカメラの太さより鼻腔内が狭い場合には、鼻からの胃カメラが出来ないことがあります。
1-3、胃カメラを鼻から入れる場合の気持ち悪さ(嘔吐反射)
口から胃カメラを入れるときは、胃カメラを喉から通して食道の方に進めていきます。その際、胃カメラが舌の付け根あたりに触れると「オエッ」と吐きそうになることがあります。これが嘔吐反射です。
この嘔吐反射を起こさずに胃カメラを行うには、上の図のように舌の付け根付近に胃カメラを触れないように挿入する必要があります。鼻から胃カメラを入れれば舌の付け根に触れることなく食道の方に進められるため、吐きそうになる苦痛や恐怖を感じることなく検査を実施できるのです。
1-4、口からの胃カメラとの比較
具体的な違いは以下の4点です。
・「オエッ」と吐きそうにならない
・検査中でも呼吸がしやすい
・会話しながら検査できる
・使用する内視鏡の太さが細い
それぞれ解説します。
「オエッ」と吐きそうにならない
胃カメラを鼻から入れて行う場合、気持ち悪くなったり吐きそうになったりすることはほとんどありません。
口から入れた場合は、舌の付け根周辺に内視鏡が当たると「オエッ」と嘔吐反射を誘発してしまうことがあるため吐きそうになることがあります。
しかし、鼻から入れた場合は下の付け根周辺には触れずに喉より先へ内視鏡を薦められるため、吐き気を催すことは少ないです。
胃カメラで吐き気が心配な方は、鼻からの方法をおすすめします。
検査中でも呼吸がしやすい
鼻から胃カメラを入れると口で呼吸できるため、多少の苦痛があっても口で深呼吸して息を整えながら検査できます。もし口から胃カメラを入れる方法で行った場合、口で呼吸するのは難しいため、常時鼻呼吸です。
ずっと鼻だけで呼吸していると途中で苦しく感じたり、鼻水が出て詰まったり、呼吸を整えるのが精一杯になってしまうかもしれません。
会話しながら検査できる
胃カメラが鼻から入っている場合、口は自由に動かせるため、医師や看護師と会話しながら検査を進められます。もし検査の途中で痛みが強くなったり、呼吸が苦しくなったりした時は、すぐに伝られて安心です。体調に合わせながら進めていきましょう。
使用する内視鏡の太さが細い
鼻からの胃カメラを行う際は、口からの胃カメラを行う際に使う内視鏡より径の細いものを使用します。口からの胃カメラの際に使用する内視鏡だと、鼻腔からは太くて挿入できないからです。
また、細い内視鏡を使用することで、口からの胃カメラを行う時と比べて検査中の圧迫感が軽減されます。
以上のように鼻からの胃カメラは、口からの胃カメラより楽に検査を行うことが可能です。ただし鼻からの胃カメラにもいくつかのデメリットがあります。
・カメラの太さが細い分画像の解像度が口からの胃カメラより劣る
・鼻腔が狭い場合には痛みがでる
・鼻腔が狭い場合には検査ができない(口からの胃カメラに変更)
それぞれについて解説します。
カメラの太さが細い分画像の解像度が口からの胃カメラより劣る
口からの胃カメラは、おおよそ10mmほどの直径ですが、鼻からの胃カメラは、おおよそ5mmほどの直径となっています。カメラが細い分画質が落ちます。画質が落ちると、早期のがんなどの見落としにつながる可能性があります。
*当院でも導入しているオリンパスのGIF-1200Nは、CMOSイメージセンサーが導入されており従来の経鼻内視鏡と比べノイズの少ないハイビジョン画像で観察が可能となっています。
鼻腔が狭い場合には痛みがでる
鼻腔が狭いとカメラが鼻の粘膜を傷つける可能性があり、痛みや出血につながる可能性があります。
鼻腔が狭い場合には検査ができない(口からの胃カメラに変更)
鼻腔をカメラが通過しない場合には、鼻からの胃カメラを行うことができません。この場合には、仕切り直して口からの胃カメラに変更する必要があります。
以上のようなデメリットもあるため、胃カメラの方法の選択を賢くする必要があります。
何らかの理由で麻酔剤を使用することができない場合には、鼻からの胃カメラである経鼻内視鏡を選択することが望ましいと思います。
内視鏡検査の静脈麻酔については、「胃カメラ・大腸カメラの静脈麻酔(鎮静剤)って怖くないの?」で詳しく解説していますので、ぜひご参考にしてください。
2章、胃カメラを鼻から入れる場合の実際の流れ
胃カメラを鼻から入れて検査する場合の実際の流れについて解説していきます。
口から入れる時のように「オエッ」と吐きそうになる感覚がないため、口から入れて行う時よりも少ない苦痛で検査できるのが鼻から入れる胃カメラの特徴です。
痛みが心配になるかもしれませんが、麻酔を使用しながら行っているためそれほど心配いりません。
次から検査時の流れについて、詳しく解説していきます。
2-1、鼻に麻酔
まずは鼻に麻酔をします。あらかじめ鼻に麻酔をしておくことで、鼻からスコープが入る時の痛みや違和感を軽減できるからです。
麻酔の方法は、スプレータイプのものを噴霧したり、ゼリータイプのものを注入したり、さまざまな方法があります。
また、これらの麻酔は潤滑剤としても役目を果たしているため、細い鼻腔内でも抵抗なく内視鏡操作ができるのです。
2-2、鼻からスコープを入れる
鼻に麻酔ができたらいよいよスコープを挿入していきます。スムーズに挿入するコツは、できるだけ力を抜いた状態で医師に身を任せることです。あまり怖がったり緊張しすぎたりすると、体に力が入ってスコープが挿入しにくくなってしまいます。逆に痛みが強くなったり、圧迫感で苦しくなったりする可能性があるため、深呼吸を意識しましょう。
もし検査している途中で何かあれば、遠慮なくその場の医師や看護師に伝えてください。口からの胃カメラと違って口は自由に動かせます。
2-3、咽頭内の観察
鼻腔からスコープを入れて進めていくと、まずは咽頭に到達します。咽頭とは喉の部分です。上から順番に、上咽頭・中咽頭・下咽頭の3つに分かれています。
まずはこの咽頭部分から観察します。具体的な観察ポイントは、がんやポリープの有無、粘膜の色や形状などです。上咽頭、中咽頭、下咽頭と、徐々に下の方へカメラを進めながら観察していきます。
2-4、 胃カメラで食道・胃・十二指腸の観察
咽頭を通り過ぎた後は、食道、胃、十二指腸と順番にカメラを進め、上部消化管内を観察していきます。ここでは腫瘍やポリープの有無を調べることが可能です。具体的には、食道がん、胃がん、ポリープ、潰瘍、などの病変があるか、どれくらいの範囲に及んでいるのか、などが分かります。
もしこの段階で腫瘍やポリープなどの病変が見つかった場合、その場で内視鏡を用いて組織を採取することもあります。消化管の粘膜には痛覚がないため、組織を採取する際に痛みを感じることはありません。
2-5、観察したら最後にスコープを抜く
上部消化管内の観察が一通り終わったらゆっくりスコープを抜いていき、検査は終了です。検査後1時間程度は鼻の麻酔が残っているため、飲食は控えるようにしましょう。また、鼻血が出ることがありますが、その場合はガーゼで圧迫するように抑えて止血してください。その他、日常生活上で注意することは特にありません。
鎮静剤を使用して検査を行なった場合は、検査後は30~60分程リカバリールームで休んでから帰宅となります。車の運転は危険なため、交通機関を使って帰るか、誰かに運転してもらいましょう。
3章、経鼻内視鏡検査の費用
胃カメラ検査にかかるおよその費用はこちらの表の通りです。ご参照下さい。
保険診療 | 1割負担 | 3割負担 |
---|---|---|
胃カメラ | 約1,500 円 | 約5,000 円 |
上記の費用はあくまでも概算のため、検査の内容によって前後します。例えば、消化管内を観察しやすくするための薬剤を使用したり、組織生検を実施した場合は追加料金が発生します。また、診察や採血の費用は別途必要となります。
4章、経鼻内視鏡検査についてのQ&A
よくある経鼻内視鏡検査に関する4つの質問について答えます。
具体的な質問内容はこちらです。
Q1、前日や当日の食事はどうしたらよいのか?
Q2、経鼻内視鏡検査を楽に受けるための準備は?
Q3、経鼻内視鏡検査で鼻から出血したらどうすればいいのか?
Q4、口からと鼻からの胃カメラの費用の違いは?
それぞれ解説します。
Q1、前日や当日の食事はどうしたらよいのか?
胃カメラ検査を行う前日の21時から絶食してください。前日21時を過ぎてから何か食べてしまうと、消化管内に食べ物が残っているせいで内視鏡が上手く入らなかったり、十分な観察ができなかったりする可能性があります。
水分は摂っても大丈夫ですが、水かお茶が望ましいです。コーヒー、ジュース、牛乳など色が付いたものは飲まないようにしましょう。
もし制限があることを忘れて飲食してしまった場合は、検査が延期になることもあります。ご注意ください。
Q2、経鼻内視鏡検査を楽に受けるための準備は?
経鼻内視鏡検査を楽に受けるために、あらかじめ準備しておくことは特にありません。強いて言うなら、体の力を抜き、長めにゆっくり呼吸するのを意識するのが、できるだけ楽に検査を終わらせるコツです。シンプルですが、誰でも簡単にできて効果的な方法になります。
また、検査を受ける上で分からないことや不安なことがある場合は、遠慮せずに質問しましょう。分からないことがあるまま検査を受けるのは、それだけで一つのストレスとなりえるからです。手順や注意点について具体的にイメージできていた方がストレスなく検査を受けられます。
Q3、経鼻内視鏡検査で鼻から出血したらどうすればいいのか?
鼻から胃カメラ検査を行った場合、稀に鼻血が出ることがあります。しかし心配はいりません。ほとんどの場合は、鼻をガーゼで押さえたり、上から3~5分程度圧迫すれば止血できます。
ただし、次の項目に当てはまる方は注意が必要です。
・血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)を飲んでいる。
・もともと鼻血が出やすい。
・普段から血圧が高い。
このような方は鼻血が出やすかったり、止まりにくかったりします。もし検査後に鼻血が出たら、保冷剤などで鼻を冷やしながら圧迫するとさらに止血しやすくなっておすすめです。
Q4、口からと鼻からの胃カメラの費用の違いは?
鼻から行う胃カメラの方が費用は少し安いです。しかしそれほど大差はありません。検査の質を重視するなら口からの胃カメラ、できるだけ少ない苦痛で検査することを重視するなら鼻からの胃カメラ検査、という基準で選ぶのをおすすめします。ただし静脈麻酔の使用を希望する場合には、口からの胃カメラをお勧めします。
まとめ
今回は、鼻からの胃カメラについて解説しました。鼻からの胃カメラについては、以下のポイントが重要なこととなります。
口からの胃カメラが苦手な人は鼻からをおすすめ
経口より経鼻の方が痛みが少なく検査ができる
鼻腔が狭い方は痛みが出ることがある
経鼻は経口より内視鏡の画質が低い
推奨は経口で静脈麻酔の併用
以上のポイントを理解して、自分にあった検査方法を選択することが大事だと思います。
当院では、内視鏡検査に関する消化器専門外来を毎日行っています。ご気軽に消化器専門外来でご相談いただけたらと思います。
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